まさとが彼女さんの話をする瞬間が一番胸が痛い。 その話を聞く私はどんな顔をしているんだろう。 みんなまさとの近況を楽しそうに聞いていて、 だから私も一生懸命平気な振りをしてしまうよ。 でも、ほんとはいてもたってもいられなくて思わず席を立ってしまった。 誰にも気づかれないようにそっと、逃げるように。 辛いとき、トイレへ逃げる癖は高校の時から変わらない。 目を瞑り、ため息のような深呼吸をする。 全部が嘘だったらいいのになって思う。 けど同時に現実を突きつけられたような気がして、 先はなく、暗いということを知る。 まさとに会うときは必ずつけることにしてたネックレスも、 Tシャツの中に隠してしまう弱いわたしがそこにいた。
『あこは好きな人できた?』 ふとけいちゃんからの質問に、顔を斜めにしてしまった。 うんと縦にふるほど勇気もなく、首を横に振るほど自分に嘘をつきたくなかった。 『あたし、ほんと不器用なんだ。』 けいちゃんに顔を向けて、でもまさとにも聞いてほしくてそんな話をした。 好きな人ができても、素直になれないって。 笑顔が作れなくなっちゃって、どうしていいかわからなくなる。 目も合わせられなくなっちゃうくらいだって。 全部全部、それがまさとへの今の状況なんだよ。
まさとと仲良くなればなるほど、あぁこの恋は難しいなって痛感するよ。 まさとがわたしに振り向いてくれる可能性なんて ほとんどないんだなって確信するばかり。 それでも好きなんだ。 どんなに想っても、想いは届かないのにね。
|