2009年03月10日(火) |
「奇跡のリンゴ」の木村さんの話…そのきっかけは偶然だった |
さて、昨日からの続きになります。 今日も、この本からの話です。 深くいろいろと考えさせられた本だったので、 じっくりと紹介したいと思います。
「奇跡のリンゴ」 木村秋則さんの、無農薬リンゴができるまでの、 壮絶な闘いのお話です。
昨日も書きましたが、無農薬のリンゴを作ることは、 100%に近いほど不可能なことで、それほど、 リンゴの無農薬栽培はむずかしいのだそうです。
なぜなら、私たちが今食べているリンゴは、 古代の野生のリンゴとは違い、品種改良に改良を重ね、 そして、大量生産できるように考えられた、 ある意味工業食品ともいえるようなもので、 そのために、リンゴが自分の力では実をつけることが できなくなっていて、農薬や肥料や人間の手をかけてこそ、 できる実なってしまっている、からです。 そのことについて、この本ではこう言っています。
「日本の研究によると、農薬を使わなければ、 病害虫の被害によって、リンゴの収穫は、 90%以上も減ると言われている。(略)
農薬の存在しない時代には、たとえ品種改良で、 甘いリンゴを実らせる木が生まれるとしても、 その木が病害虫に弱ければ育つことはできなかった。 別の言い方をすれば、農薬など使わなくても病害虫に 負けない品種しか栽培できなかったのだ。
ところが農薬の出現とともに、 その制約がはずされることになる。 害虫や病気との戦いは農薬が肩代わりしてくれるのだ。 病害虫に対する耐性を考えずに、より大きく、 より甘いリンゴを実らせる木をつくることだけを 目的とした品種改良ができるようになった」
そして、これは、 こんな問題提起をしているそうです。
「その積み重ねの結果として、 農作物は、自然の産物というよりも、 ある種の石油製品になってしまった。 現代の農業は、 大量の化学肥料や農薬を投入し、 農業機械を使わなければ、 成り立たなくなっている。 化石燃料が枯渇したら、 いったいどうなるのだろう」
そして、リンゴのという果物は、 他の果物や野菜と違い、 虫と病気の絶望的な戦いの歴史から生まれた果物で、
「農薬に深く依存した、 現代農業の象徴的存在」
ともいえるのだそうです。 ちなみに他の果物、野菜はリンゴよりは、 簡単に無農薬栽培ができるということです。
さて、こんな事情があるリンゴのことを、 青森県で生まれ育ち、リンゴ畑を4つも持つ、 木村さんもよーく知っていました。 そして、年に十数回も農薬を散布しながら、 リンゴを作っていたのです。
ところが、 ある偶然が木村さんを この不可能とも思える 「無農薬リンゴづくり」 に向かわせます。
その偶然とは… 一冊の本でした。
木村さんは農作業の暇な間、図書館に通ったり、 本屋に出かけて農作業の疑問に答えてくれる本を 探しては、読みふけり、勉強をし、 アイデアを思いつけばノートに書いたりしてました。
こんなふうに勉強するための、参考資料を探しているときに、 (このときは、トラクター農業に関する資料を探していた) 偶然に出合ったというのです。 木村さんの言葉によるとこんな具合です。
(欲しい本が、棚の上の方にあったので、 本当なら、踏み台を探すか、店員を呼ぶべきだったけど、 ちょうどそこにいい具合の棒があったので、 その棒で本を取ろうとした)
「その棒でさ、トラクターの本をつっついたわけ。 そしたらよ、隣の本も一緒になって2冊落ちてきた。 慌てて拾ったら、隣の本のカドがつぶれてしまっていたの。 雪だか雨だかで床が汚れていたから、泥も少しついていたかな。 それで、しようがないから、その本も一緒に買ったの。
値段は2000円近くしたと思う。 結構高いのにさ、なんか安っぽい紙を使っていてな。 本の綴じ方も良くなくて、開いただけで 破けてしまいそうな感じでよ。 これは損をしたなぁと思って、家に持ち帰ってからも、 しばらく放っぽらかしにしていたの。(略)
ちゃんと読んだのは、それから半年後が、1年後。 暇だったときか何かに引っ張り出してみたの。 表紙に稲の写真があって、本のいちばん最初のところに、 『何もやらない、農薬も肥料も何も使わない農業』 と書いてあった。 ああ、こういう農業もあるのかなと。 自分でやるやらないは別としてな、同じ百姓として 興味がわいてきたのさ。 それから何回、その本を読んだかわからない。 本がすり切れるほど読んだ。 福岡正信さんの書いた『自然農法』 という本でありました」
この偶然に手に入った本が、 木村さんの人生を変えることになったのです。 また、奥さまの美千子さんが農薬に弱かったと いう事情もありました。
私は、この言葉を読んだとき、 ああ、木村さんは 「これをやりなさい」 と、天から選ばれた人なんだ と思いました。
そして、木村さんは、 この本に導かれるように、 不可能と言われていた 「リンゴの無農薬栽培」を してみようと決意するのです。 自分なら、それが出来ると信じて。
そして、その後、木村家は、 この無農薬リンゴ栽培のために借金をし 生活することさえもむずかしくなっていき、 村人からも疎外されていきます。
木村さんのリンゴ畑は4つあったのですが、 農薬散布をしないために、 ほとんどのリンゴの木がダメになりかけ、 成果がでない8年間に、 木村さんは、何度も絶望します。 そして、自殺しようとまで思い詰めます。
しかし… 自殺しようとしたそのときに、 本当の奇跡が起こったのです。
そして、11日の「ことば探し」でも書いた、
「バカになるって、 やってみればわかると思うけど、 そんなに簡単なことではないんだよ。 だけどさ、死ぬくらいなら、 その前に1回はバカになってみたらいい。 同じことを考えた先輩として、 ひとつだけわかったことがある。 ひとつのものに狂えば、いつか必ず、 答えに巡り合うことができるんだよ」
に、結びついていくのです。 このあたりの話は、明日書きますね。
木村さんの運命を変えた、 福岡正信さんの「自然農法」は、こちらです。↓ (改編されているので、木村さんが読んだものと 全く同じではないと思いますが)
実はこの本、私もかつて読んだことがありました。 無農薬トマトを育てようとして。 でも、私には何がなにやらわからない本でした。 ただ、こんなことが本当にできるのか…と 思ったことだけは覚えています。
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