まゆのウォーキング、ぼちぼち日記

2006年11月09日(木) 仰天ホテル…番外編

昨日、いつも「ぼちぼち日記」を読んでくれる
知り合いと合い、この仰天ホテルの話をし、
「もっとこんなことがあったんだよ〜」
などと、話をしたら、
「それは、書くべきだよ〜」と言われ、
私も、すっかりその気になり、
今日は番外編を書くことにしました。
今週はこのホテルで始まり、このホテルで終わりですね。

でもね、今日の主役は、ホテルではなくて、
あの無表情の仲居さん兼夕食の給仕をしてくれた
おばさんなんだな。


実は、このおばさん、
なかなか「まいったね…」の
おばさんだったのだ。



年の頃は、そうねぇ、60〜68歳くらい。
若い頃は、ちょっと気は強そうだけど、
けっこう美人だったのではないかと思えるような顔立ち。
しかし、今はやや深いシワが顔に刻まれ、
お化粧は濃いめ、白髪交じりの髪を1つに束ねて、
少し水商売ふうが入っていて、
過去を感じさせるような雰囲気を醸し出していた。
そんでもって、笑顔はあまりなし。

しかし、話せば、ざっくりとした
わりと腹を割って話せそうな、そんな感じもある。
簡単にいうと、笑顔がないけど、本当は、
がらっぱちなおばちゃん、って感じかな。



とまぁ、外見を書いてみたが、
私たちに接する態度はあくまで、
よそよそしく、杓子定規な感じだった。

さて、こんなおばさんが、部屋に案内してくれ、
夕食の給仕をしてくれたのだけど、
この夕食のとき、このおばさんに、
大胆にも、話しかけてみようということになり、
私たちはおばさんに話しかけてみることにした。



とりあえず、名前を聞かなくちゃね。
話しかけるときには、
名前で話しかけたいし。
そこで、こう話かけた。



「あの〜、お名前なんて言うんですか?」



すると、このおばさん、
顔色をちょっと変えてこう言った。


「え、名前ですか?何でですか?
 私が、誰かに似てるとか、ですか?」



女将から、このグループは要注意などと言われているのか?
かなり、警戒しているようだった。

私たちは、意外な反応にちょっと驚き、
ありゃ、まずかったかな、などと思いつつ、
「あ、いや、そうじゃなくて…ただ、話をしたいなぁ、
 なんて思ってね。名前を最初に聞こうかな、なんてね」
などと、言葉を濁した。


すると、少しゆるんで、
「ああ、そうですか、稲村です(仮称)」
と教えてくれた。



ホテルでは、名札を付けているところも多いが、
ここでは、名前を聞くのも気を使う有様だ。
しかし、まぁ、名前は聞けた。
それから、私たちは、このおばさんのことを
稲村さんと呼ぶことにし、
仲間内では、稲ちゃんと呼ぶことにした。



さて、この稲ちゃんである。


稲ちゃんが、簡単に食事の説明をしに来てくれたとき、
答えは全く期待していなかったが、
こんなふうに話しかけてみた。


「この食材は、この辺りで取れるものなんですか?
 こんなふうに料理して食べるんですか?」

すると、稲ちゃんは、こう答えた。


「と、思うけど、実は、
 私はこの辺りの出身ではないんです」



どうやら、稲ちゃんは
この辺りの出身ではなかったらしい。
そう、言われると、やはり、
こう聞き返すのが素直な反応だと思う。



「え、どこの出身なんですか?」



すると、稲ちゃんは、
なんと、こう言ったのだ。





「あのね、アフリカ」 


  ………


  し〜ん





私たちは、あまりな意外な答えに、
リアクションを忘れ、
言葉を失ってしまった。



稲ちゃん、どこからどう見ても、日本人だし、
言葉だって、どう聞いても立派な日本語である。
アフリカなまりなんてない。
アフリカ語知らないが…

仕方ないので、
「へぇ〜アフリカなんですか…」
などと、まぬけに答えた。


そして、「アフリカ」だと言うと、
稲ちゃんは、席を立って行ってしまった。
取り残された私たちは、
「いやぁ、アフリカとは、まいったね」
などと笑いあって、場を盛り上げた。


すると、ちょっとして
稲ちゃんが戻ってきて、
こう言った。




「さっきアフリカって言いましたけど、
 誤解されるとたいへんなので、訂正します。
 ホントは、アフリカじゃないんです。」




誰も誤解してないって。
大丈夫、誤解なんて誰もしないって。
しかし、稲ちゃん、大まじめ。



そこで、また私たちは聞いた。

「で、本当はどこなんですか?」
「秋田です」


なんと、本当は秋田出身だったのだ。
それなら、わかる。
素直にわかる。


「ああ、秋田から来たんだ、いつ頃ですか?」
「一年前くらいです」
「ありゃ、じゃ、来たばかりですね、
 全然違いますか、風習は?大変ですか?」


などと、稲ちゃんに質問をしながら、
話をすると、少しうち解けてきて、
稲ちゃんも笑顔を見せるようになってきた。
少し、うち解けたので、
なぜ、この地に来たのか、聞いてみることにした。
そこで、冗談まじりに、こう聞いた。



「なんで、ここに来たんですかぁ?
 あ〜若い男と駆け落ちしてきたとか?」


すると、稲ちゃんは、
大まじめにこう答えた。


「違います、私、恋愛ごとは嫌いなんです。
 男女のイザコザなんてイヤでしょ」
(全員)「ほぉ〜」
「ふったふられたなんて、面倒で。
 男のことで、悩んだりするのはいやだし。
 だから、私、今までふられたことないの。」
(全員)「ほぉ〜〜」




その答えを聞いて、
後輩が身を乗り出してこう聞いた。



「え、すごいなぁ…どうやったらいいんですか?
 ふられないようにするには…」


すると、稲ちゃんは、
こう教えてくれた。




「あのね、ふられる前にコッチがふるの」


ごもっともである。
全く、ごもっともである。


後輩、がっくり。




しかし、こんな話から、少し話がはずみ、
稲ちゃんと楽しく話をすることができた。
よかった、よかった。

稲ちゃんが、なぜ、秋田からこの地(湯西川)に
流れてきたのか、駆け落ちでないことだけは
わかったが、ついにはっきりとわからなかった。
そこまでは、怖くて突っ込んで聞けなかった。


私たちは、いろいろな理由をこっそりと考えてみたが、
「たぶん、何かあったのだろう、
 あの顔に苦労がにじみでている」
などという、どうでもいい結論に落ち着いた。

そして、さらに、一年前に来た人に、
どうして、
「紅葉は、あと二日早い」
などとわかるのか…などと言い合った。
しかし、これも謎だった。



さて、朝になると、稲ちゃんは、
昨夜の着物姿から、ホテルの制服に着替えて、
白いソックスをはき、朝食の給仕をしていた。
そして、私たちに、少し笑いかけながら、
(すぐに、無表情になったが)
コップに半分も入ってない、
オレンジジュースを渡してくれた。
(きっと、半分と言われているのだ)


しかし、稲ちゃんは、このホテルで
いろんな仕事をこなしながら、
頑張っているのだと、感じられた。

「稲ちゃん、身体に気を付けて、
 元気でこれからも、頑張ってね」
と私は思ったのでした。



というわけで、今日は番外編で、
頑張る稲ちゃんのお話でした。



あ、湯西川、景色は最高!ですよ。









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