さて、昨日からの続きです。
私は、道ばたで出合った若い女性から、 いきなり、電気のつく鳥のペンを 「買わないか?」とすすめられた。
しかし、どう考えてもいらない。 これは、はっきりとしている。 しかし、 なぜ、こんな商売をしているのか? 他にどんな商品があるのか? 道ばたで売っていて売れるのか? これは、何としても聞かねばならない。 その他にも疑問はあるし…
そこで、今回は、 思いきり親しみ作戦でいくことにした。 こんな時、話を聞くには、 なんといっても親しみ感が大事である。 しかしそれだけでは相手に失礼なので、 商品への関心もちょっとは寄せながら、 親しみいっぱいに聞くのがポイントである。 (そんな作戦が通ればだが…)
そこで、私は親しげに、 こう聞いてみた。
「ちなみに、これはいくらなの?」 「安いですよ。普通の販売店だと1000円で、 ソニープラザとかだと700円で売ってますけど…」 「え、そんなにするものなの?」 「ええ、でも、ここで買うと300円です」
300円だって… 安いんだって… どう考えても電気がつかなくてもいいし。 私は、全くいらないぞ。 でも、そう言ったら、話が聞けない。
「300円…ねぇ。 でも電気、別につかなくてもいいな」 「暗いところで書くとき便利ですよ」 「暗いところで書かないもん」 「でも、何かあったとき、明かりがつくといいですよ」 「うん、でも何かあったときに、このペンを 持ってないかもしれないし…」
などと、言ってから、 あっ、これじゃ、親しみから遠い、 いかん、いかんと思い、 話題を変えることにした。
「ねぇ、この商品って売れるの?」 「ええ、結構買ってくれる人いるんですよ。 割りと人気あるんです。ソニプラでも売ってるし。 この商品を知っている人もいるし…」 「へぇ、人気あるの、売れるんだ…。 で、いつも、こうやって売っているの?」
「はい、そうです。この辺りの家を 一軒一軒回ってるんです」 「ひぇ〜、お家を回っているんだ…それは スゴイね、嫌がられない?」 「そういうお宅もあるけど、 買ってくれるお宅もあるので…」
なんと、 この女性は、この辺りの一軒一軒を 回って、このペンを売っていたのだ。
私は 「あらぁ、ご苦労様だね…」 などと親しみこめて言いながら、 ついに、いちばん聞きたいことを 聞いてみることにした。
「どうして、こんなふうに売ってるの?」
すると、彼女は、 なんと、 こう言ったのだ。
「研修なんです」
なんと、「研修」だって…
「えっ、研修?なんの?」 「商品販売の…」 「えっ、この電気ペンの?」 「いいえ、その他にもあるんです」 「あ、別な商品も売ってるの?」 「はい、違う商品も売ってます」 「せっかくだから、見せてもらってもいい?」 「いいですよ」
どうやら「商品販売研修」らしい… しかも違う商品も売っているというので、 見せてもらうことにした。
女性は、ちょっと離れた所に置いてあった、 荷物運搬用カートから、何かを取り出してきた。 このカートには、商品がいっぱい入っているのだ、 たぶんだが。
「これです、ステンシル型のセットです」 「へぇ…ステンシル型セット、ちなみに、 これはいくらなの?」 「安いですよ、これで、1000円です。 他だと2000円以上するんです、いかがですか?」
私はこのステンシル型セットを開いてみた。 ステンシルをするための型が何枚か入っていた。
「ステンシルしないからなぁ… いらないなぁ…」 「そうですか、楽しいけどなぁ」 「うん、楽しいけどねぇ…」
などと、断りながら、 引き続き聞いた。
「ねぇ、ところで、こんな風に毎日 この商品を売っているの?」 「そうですよ」 「何の研修なの?このメーカーの?」 「メーカーではないけど、商品販売の研修です」 「ふぅーん、ご苦労さまだね、まぁ確かに、 こうして売っていると度胸とか根性はつくね」 「はいっ」
度胸とか根性をつけるための「研修」なのか? 商品販売研修なら、店で売った方が 研修になると思うのだが…
「そうそう、そういえば、違う道で、 若い男性にも雑貨を買わないかって聞かれたけど、 あれも、一緒の会社の研修かな?」 「どうでしょう…でも、そうかもしれません」 「どうもありがとう、いろいろと見せてくれて、 頑張って売ってね、売れるといいね」
そろそろ引き止めて置く限界だったので、 そうお礼を言って、この女性と別れた。 すると、この女性は、大急ぎで駆け出し、 この近辺の家の、チャイムを鳴らして、 商品の売り込みを始めた。 一軒、一軒ね。
ふーむ…
道ばたで「買いませんか?」と声をかけるのは、 本道ではなくて、実は、一軒一軒商品を売り歩く つまり「押し売り」であることがわかった。 しかも、研修という名目で。
というわけで、なぞの「研修」の 一端をかいま見たが… 歩きながら、私は考えた。
「ただの研修ではあるまい」
そして、次のように推測してみた。
1.商品販売メーカーの新人研修 こんなことをさせて、根性ややる気をみる。
2.あやしい自己啓発セミナーの度胸試し研修 よく街角で、度胸を付けるために、大きな声で、 「私は、○○です、今、○○をしています。 どうか、話を聞いてくださいっ」 の変形バーション
3.宗教 研修という名目の修行か、 よく売りに来る「珍味売り」のような 教団資金集め
本当には何の 「研修」なのか? 本当に「研修」なのか? それか、本当に、 単なる商品販売会社の「研修」なのか?
結局、謎は残ったままだったが、 また、出合ったら、今度は、 さらに突っ込んで聞いてみようと思った。 どなたか知ってる人がいたら、 ぜひ教えてくださいませ。
そんな訳で、道ばたであった 研修中の商品販売の話でした。
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