2006年08月07日(月) |
中村さんと会えたのか? |
先日、友人と新宿西口地下の交番前で 午前11時に待ち合わせをした。 私は、買い物もあったので家を少し早めに出て、 買い物をすませ、10時50分頃に交番前に着いた。
周りを見ると、私の横におじさんがいた。 私より前にいて、少しきょろきょろしていた。 誰かと待ち合わせしているらしい。 私はそのおじさんからちょっと離れたところに立った。
そこにちょうど友人からメールが入り、 「1本電車に乗り遅れたので、ちょっと遅れる」 と連絡があった。
じゃ、少しのんびり待とうと思って 本を取り出して、読み始めた。
10時55分
隣のおじさんの待ち合わせをしていた 友人らしいおじさんがやってきた。 共に60代半ばって感じ。 そして、 「どうも、今日はよろしく」 などと、挨拶をしていた。
2人は、こんな話を始めた。 (便宜上、AとBにしておきます) A「中村さんも、来るんだろう?」 B「ああ、ちゃんと連絡してある」 A「11時だよな」 B「うん、ちゃんとそう言ってある」 そして、2人は、中村さんを待っていた。
11時
中村さんはまだ来ない。
この2人のおじさんは、また話始めた。 B「来ないな…中村さん、何かあったかな」 A「普通は待ち合わせの5分前には来るのが常識だろう。 本当に11時と言ったのか?」 B「ちゃんと、この場所と時間は言ったよっ」 2人は、次第にイライラしてきたようだった。
11時5分
中村さんはまだこない。
すると、ついに2人のおじさんは、 大きな声で言い争いを始めたのだ。
私は、本を読むどころではなくなってきて、 2人の会話に耳を傾けた。 とても大きな声で話しているので、 すべて聞こえてくる。 要約すると、こんな状態のようだった。
どうやら、中村さんは、Bさんの友人である。 Aさんは、中村さんと飲み屋で一度会ったことがある。 今日は、この3人で、どこかに何かを 見に行く約束をしていたらしい。 新宿西口交番前で11時に待ち合わせをして。
2人は、ちゃんと連絡したかどうかで もめていたが、その時に、 とんでもないことが発覚したのだ。
A「場所が、分からなかったら携帯に電話して くるだろう、来ないって事はおかしいじゃないか」 B「今日…携帯忘れた…」 A「なんだって?携帯忘れたっ?なんで忘れたんだっ?」 B「忘れたものは忘れたんだからしようがないだろうっ」 A「こんな時に携帯忘れるなんて、前の日からちゃんと 用意してないからだっ」 B「そんな事は、わかっているっ」 A「本当に、ちゃんと連絡したのか?」 B「ちゃんとしたって言ってるだろう!」
この大切な待ち合わせに、 Bさんは携帯を家に忘れてきたらしい… とんでもないことである。 前日から、ちゃんと用意をしておかなかったらしい。 Bさん、それは、失態だね、今頃、家で携帯鳴ってるよ、 などと私は思っていた。
2人はもう怒鳴り合い寸前までになっていた。 大きな声で言い合っているので、 周りの人も見ているが、2人は、そんなことより、 「ちゃんと言ったのか、なぜ、携帯を 忘れてしまったか」で口論していた。
11時10分。
中村さんはまだ来ない。
私の友人が、 「あ、ごめんねぇ、お待たせ」と 言ってやってきた。 そして、2人のおじさんの尋常でない様子を見ると、 「どうしたの?」と聞いてきた。 私は、小さな声で、 中村さんが来ないことでもめていることを話した。
そして、 「この結末がどうなるか、見ておきたい」 と友人に言うと、友人も 「そうね、これは見届けないとね。 中村さんってどんな人なのか見たいね」
などと、すぐに話がまとまり、 私と友人は、見てみないふりをしながら、 注意深く2人のおじさんを見守ることにした。
一体、どうするんだろう。 中村さんは、本当に来るのか?
すると、ついに おじさん2人の間で結論が出た。
なんと、このあたりを 探してみようと言うのだ。
B「中村さんを覚えているか?」 A「一度しか会ってないから、よく覚えてないが、 向こうが覚えているかもしれない…」 などと言っている。
私は、飲み会の席で一度会って、 それがいつ頃か知らないが、 こちらがはっきり覚えてないのに、 向こうが覚えてるはずはないと思った。 また、探しに行こうと言いあっている、おじさんたちに、 「新宿西口には地下にも、地上にも交番がある」 と教えてあげようと思ったが、 友人には教えたが、おじさんたちには教えなかった。
Aさんはここに残っているべきだと思ったが、 ともかく2人はじっとしておれないようだった。 そして、2人で探しに行くらしい。 2人とも、相当怒り合っている。
どうするんだ、この2人。 中村さんは、どこにいる、 本当に、来るのか。
11時20分
中村さんはまだ来ない。
ついに、2人は、バラバラに 中村さんを探しに歩き出した。
あーあ、行っちゃったよ、2人とも。 この広い新宿駅のどこをどう探そうと言うのか。 しかも一人は、顔もよく覚えてないというのに。 しかも、携帯も持ってないで… 大丈夫か?
私と友人は、顔を見合わせた。 「どうするんだろうね…」 「中村さん、来ないね…」 私たちは、しばらくそこにとどまり、 違うおじさんが来ると、 「あっ、あれが中村さんじゃない?」 などと話をしていた。 しかし、全部違う人だった。
「でもさ、よく考えてみると、中村さんが 男性か女性かも、私たちは知らないんだよね」 そう、友人が言った。 「あっ、そういえばそうだね。てっきり 同年配のおじさんかと思い込んだけど、 違うかもね…。じゃ、もしかして隣にいる おばさんが中村さんかもしれないね」
私たちは、ひそひそと言い合った。 しばらく待ってみたが、2人のおじさんと、 中村さんは、来る気配がない。 (どんな人かは知らないが…) 私たちも、そろそろ行かねばならない時間になってきた。 ランチの予約を入れていたのだ。
11時30分
2人とも戻ってこない
「あの2人、戻ってこないね」 「会えたのかな?中村さんに?」 「さあね、でも2人で探しにいってもねぇ…」
残念だが、私たちは、 結末をみることを諦めた。 どうだったんだろう… 中村さんには会えたのだろうか?
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