出張で最も遠い支店まで車で出張したときのこと その最も遠い支店から、次の支店に移動する時に いつも通りの道を使うとすると 峠をひとつ越えることになるのだが。
それまでは、気持ちの良いくらいの晴天だったのに 峠に差し掛かった途端に、急に雲行きが怪しくなり ぽつぽつ降り始めた雨は、山頂付近ではもうどしゃぶりの雨に変っていた。 滝のように激しく叩きつける雨は容赦なく視界を遮り 昼間にもかかわらず数メートル先すら見えないほど。 かろうじて前を走るクルマのテールランプが、見えたり見えなかったり こちらもヘッドライト、フォグランプ全開で超徐行で峠を攻める。
視界の悪さ加えて、カーブの多い峠道 距離にして20kmくらいだったと思う 久し振りに神経をすり減らしたドライブだったが 不思議なことに峠を越えて反対側のふもとに差し掛かったら それまでが嘘のようにピタリと雨はやんでしまった。
ふもとに下りてしばらく走れば『道の駅』を発見 私を含め、6台くらいが連なってその峠を越えたのだけど 1台また1台と吸い込まれていくように、クルマたちは道の駅へと入っていった
駐車場に車を停めて ひと勝負?終えた運転手たちが車から降りてくる 観光に来たのであろう老夫婦、地元の作業員、そして私のようなスーツ姿 皆、まったく繋がりのない格好だったが 車を降りて、自然と目を合わせ各々に口を開く
『すごい雨でしたね〜。』 『全然見えませんでしたね〜。』 『大変だったよねぇ。』
皆が、あの厳しい峠を無事に乗り越えたことに 安堵の表情と、労いの表情に溢れていた。 全く知らない者同士が関係なくお互いに声をかける 一緒になって峠を越えたことで生まれた妙な連帯感。
なんだか、すごく絆を感じた一瞬でした。
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