言の葉孝

2012年02月16日(木) 描かれる光

 著名人が一つのテーマを元に絵画や写真を紹介する十選シリーズは日経新聞の文化欄に華やぎを与える連載である。現在の連載のテーマは「光 十選」。第一回目はジョルジュ・ラ・トゥールの「悔い改めるマグダラのマリア」だった。
 一人の婦人が蝋燭の光の中で座っている絵だが、他はともかくろうそくの光が妙にリアルで、絵だということは分かっているのに本当にそこにマグダラのマリアが座っているように見えてドキリとしてしまう。
 このテーマだと必ずフェルメールはまず外せないだろう。窓際から差す光が室内を照らしている絵は誰もが一度は見たことがあるに違いない。

 また、光というテーマを出すならルネ・マグリッドの「光の帝国」を選ぶのは安直だろうか。昼の空に夜の街というシュールな絵であるが、地上の民家からの明かり、そして昼の空に満ちる太陽の光(太陽自体は描かれていないが)はどちらも写真と見紛うほどに写実的だ。

 筆者は絵画ではあまり食指は動かないのだが、現実感のある絵には不思議と惹かれるものがある。その中で光が上手く描けている作品はいかにその光が照らす世界が荒唐無稽でも本当にそんな世界があるのかと思えるくらいに存在感を醸し出すのである。

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