mixiでマイミクの楽助さんにリクエストした内容で、人ばかりに語らせておくのも何なので、ここで僕の持論を。 僕もライトノベルばっか読んでるので、やはり判断材料もライトノベルです。
僕にとって面白いと思うのは、「体験性のある小説」。 時代背景を上手に使っていたり、雰囲気がとれもらしく書けていたりする小説です。
成田良悟氏の『バッカーノ!』シリーズは、禁酒法時代のアメリカを舞台にした小説なのですが、マフィアの跋扈するアメリカを描ききっている、とは思えませんが、小道具や時折入る史実のマフィアがらみの事件がコメントされていて、とても“らしい”雰囲気が醸し出されています。
小道具についてもっと具体的な例を出すと、水城正太郎氏の『東京タブロイド』シリーズに頻繁に出てくる「三輪オート」という乗り物があります。実はそれほどこのシリーズは描写や話の構成が優れているという印象はないのですが、このアイテム一つで戦後という雰囲気がぷんぷん出ているのだから面白いものです。
このように現実に合った時代背景をもとに、雰囲気たっぷりに話を進める小説は結構好きです。その時代考証が間違っていても構いません。とにかくらしい雰囲気に浸れる描写があればいいのです。
ただ、ファンタジーとなるとそう簡単にはいきません。時代小説となると、すでにあったものを使えば済む(実際にはそんな簡単なことではないのですが)話なのですが、道具から生活用品から、習慣から、歴史上の事件・人物から、全く読者の知識にないところから作り始めなければなりません。
かくいう自作で苦労しているのはそのことで、何とか独特な世界観を、と考えましたが名前や設定ばかりでちっともしっくりこないのです。 とりあえず完結してる現代もの2作(『生と死の狭間に』『呪縛の蝋』)が妙に文章が『魔法使い達の夢』より洗練されて感じるのは、その辺のしっくり度だと思うのです。
それをうまくやっているのが、FFシリーズ(特に7、10)であり、盛岡浩之氏の『星界の紋章』シリーズだと思います。 FFは小説ではなくゲームですが、アルティマニアなどを見れば、どれだけ細かく世界が作り込まれているかがよくわかります。FFはゲームなので細かく語られない部分でも細かく作り込んでおく必要はあったとは思うのですが。 『星界の紋章』についてはファンタジーではなくSFですが。小道具にことごとくルビを振らせるやり方は斬新で効果的な演出方法ですし、アーヴという種族の民族的特徴をとらえた物語の書き方は脱帽モノです。
僕は、これらを描くには何が必要かを常々考えていますが、それは経験と語彙、見たもの感じたものを分析する観察力、それを読者に伝える表現力の流れだと考えます。 語彙は表現力の一つですが、経験を分析する観察力にも語彙が要ります。例えば、田舎を歩いていて川で釣りをしている人がいたとします。その人は腰に網を差し、何か箱のようなものをぶら下げて川に流したままにしている。 これは鮎の友釣りの風景ですが、鮎の友釣りを知らなければ、ただ「釣りをする人」とだけ写ってしまいます。それは情緒も風流もない捉え方なのです。
それをクリアしたとしても物語の構成力、思想、知識……、小説を書くにはまだまだ沢山の力が要るのですけどね。 よくよく読みなおしてみれば、「これらを描くには何が必要か」という話は、小説だけではなく、他のほとんどの芸術にも共通しているのではないでしょうか。
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