言の葉孝

2005年05月15日(日) 『オーバー・ザ・ホライズン』感想の日

 今日、久々に更新したような気がします。
 飽く迄も気だけです。

 ヒミツノサンカクはまあまだ仮公開?みたいなもんですし、まほゆめ番外編はブリーフケースから移してきただけですし。
 金の掲示板の方に、嬉しい書き込みがあったので、今度はまほゆめを書こうと思います。何か、まほゆめ終わるまではプロにならなくていいや。部を重ねるごとに成長して行く気がするので、コレが終わって初めて新米プロ程度の実力が身に付くんじゃないかと。



 今日は下の方を見られない人もいるので、こちらの方にweb拍手レスです。

>「・・・余りにもアンラック。」

 早速、同情票入りました−!(笑)
 ちなみに雅男、由香子、東の設定を簡潔に説明致しますと。

 雅男  → 不幸、巻き込まれ型。及びツッコミ
 由香子 → 思い込み激しい、ちょっと電波。、及びボケ。
 東   → おおらか、及び天然ボケ、あと秘密

 ちなみに続くとすれば、全部で10話から20話までくらいの短編連作形式で、でも裏に一本ストーリーとしての芯が入ってる形ですね。一応ラストは考えてあります。




 以下、今朝の敗北にめげずに書いた、『オーバー・ザ・ホライズン』の書評です。

警告:この感想は『オーバー・ザ・ホライズン−僕は猫と共に空を行く』(電撃文庫/著:橘早月)のネタバレを多分に含みます。むしろ著作権に触れるんじゃないかってくらいいろいろ書いています。そのため、同作を未読の方が読むのは非常にお勧め出来ませんのでご了承下さい。
 更に同嬢のweb作家時代の作品、『カーマリー地方教会特務課の事件簿』の話題もでてきますので、読んだことのない方で分からないところも出てくるかと思いますが、そちらもご了承下さい。


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 時が経つのは早いもので、プロになられた橘さんのサイト『荒野で二人 original』が閉鎖されてからもう八ヶ月もの時が過ぎてしまいました。
 僕が今でもweb小説の中で随一の出来を疑わない絶版小説『カーマリー地方教会特務課の事件簿』、それには惚れ込むだけではなく作家としてのスタイルに多大な影響を受けているんです。今でもことあるごとにDL版の『カーマリー』を紐解いては、読んでます。

 そんな橘さんのプロとしてのデビュー作『オーバー・ザ・ホライズン−僕は猫と共に空を行く』にどうして期待が捨てられましょう。カナダから帰ってきたら真っ先に買って読もうと決めておりました。結局はなかなか見付からなかったお陰ですぐに、というわけにはいかなかったのですが、先日ついに発見しまして、この金曜日に読破いたしました。
 ま、折角ですので体系だてて、感想を述べたいと思います。

 1、ストーリーとキャラクター

 出来が良すぎたため、却って製産には踏み切られることのなかった幻の名機・アウローラを核に据えた、愛と夢と野望の物語はあまり斬新なものではなく、オーソドックスなものと言えるでしょう。
 しかし、それはあまり問題ではなく、起・承・転・転・結の段階を踏んだ展開はしっかりと読者である僕を虜にしてくれました。特に、マチェイ国境警備隊長の陰謀に引っ掛かった場面からは続きが気になって仕方がなかった程です。
 時折挿入されるコミカルなシーンもとても微笑ましくて素敵でした。

 父親から受け継いだアウローラの設計図、それをもっていたお陰でマチェイ隊長の陰謀に巻き込まれてしまった主人公トウジ君。派手さは欠けますが一本気なのが好感を持てます。自分の夢の為なら、そして自分が正しいと思ったことなら、かなり危ない橋でも渡れるタイプですね。三度渡り(マチェイ隊長の誘いに乗ったこと、ステラ嬢のお願いを聞いてあげたこと、それから騙してくれたマチェイ隊長を失脚させる計画)、最初の二度は失敗だったわけですが、よく三度目渡る気になれたと思いますよ。でも一つ目は可能性を考えると仕方のない選択だったと思うんですけど。

アウローラの設計者だった父を亡くしマチェイ隊長の養女として育てられたヒロイン・ステラ嬢。養父のマチェイ隊長にもっと可愛がられたい、そしてマチェイ隊長の考えは正しい、という感情から、トウジ君を騙す役を担うのですが、実父が設計したアウローラの設計図は自分のところに帰ってきて然るべきなのだ、と自分を言い聞かせていたところを考えるとやはり後ろめたいところはあったんでしょうね。

 アウローラに関する真実を知る者・ズィグムンド氏。実はアウローラのテストパイロットでトウジ君の父とステラ嬢の父達とはかなり近しい間柄であった彼は、作中で渋いキャラの座を欲しいままにしているのですが、ホントにいい役ですな。

 ステラ嬢と共にアウローラの試作機を極秘に手に入れ、基地の格納庫に隠しもっていたマチェイ隊長。ペトル氏は、マチェイ隊長を結局は小心者だと思っていたらしいのですが、それは多分アウローラが彼の手中にあるのを知らなかったからですね。独自解釈ですが、マチェイは元々、ペトル氏の考えていた通りの小物だったと思うんですよ。ところが、アウローラの実物を手に入れることに成功してしまった時から、これをどうしようかと画策しているうちに悪役として成長してしまったんじゃないかと。
 養女を利用し、トウジ君を騙し、さらに国まで裏切ろうとしてるマチェイ隊長もまたスゴい悪役ですね。元々、橘さんはオズマンド大司祭やシュレー枢機卿、あるいはペルロ異端審問官のような『悪』を書くのが上手だったんですよね。物語を引き立たせるにはこう言ったキャラをつくる能力も必要で、僕も見習いたい部分ではあります。

 この作品に流れる感情は見事に「アウローラをどう思うか」ですね。トウジ君は具体的にアウローラとは言ってませんが、飛行機に乗るのが夢でしたし、綺麗な飛行機が好きなので設計図にあるアウローラに乗るのは夢の至高だったのでしょう。ステラ嬢は、もっと妹のように思っていて、亡くなった実父が遺した家族のようなもの。マチェイ隊長は野望を達成する為の道具あたりでしょうね。ズィグムンド氏は、アウローラの能力を惜しく思い、制式採用されるまで粘ることをカレル博士に勧めていました。
 ズィグムンド氏の言う通り、アウローラの能力は闇に葬られるには惜しいものでしたが、カレル博士が心配していたのは飛行能力の方ではなく戦闘能力のほうだったんですね。マチェイ隊長は「戦闘能力」の方に目を付け、そしてトウジ君が必要とするのは「飛行能力」の方だったのだと思います。そして「飛行能力」を欲するトウジ君の手に渡ったのがカレル博士の苦悩に決着を付けたんですね。

 ただ、ストーリー的に気になったのは、ラストでトウジ君は訓練もしていない状態でアウローラを飛ばしてしまうのですが、アウローラって設定上他の飛行機よりも操縦が難しいらしいんですよね。イワノフ氏の助言があるとはいえ、かなり無理があるのではないかと。それに着陸は非常に難しいそうなので無事を祈りたいです。

 あれ? ストーリーの話ではイワノフ氏ってあまり出て来ないですね。

 2、印象的なシーン

 やっぱり、はじめはトウジ君とイワノフ氏との出会いのシーン(P22〜43)ですね。っていうかイワノフ氏が絡んでくるコミカルシーンは全部好きです。特に、ステラ嬢の不器用さを恐れ、修理中のタンクから遠ざけようと、イワノフ氏を生け贄にしたシーン(P126〜131)。
 いかにも相棒同士といった感じのイワノフ氏とトウジ君の掛け合いは読んでいてとても気分が踊ったものですが、ステラ嬢とイワノフ氏の絡みも面白いものです。洗濯板でイワノフ氏を洗おうとしたシーン(P161〜164)とか、クライマックスでステラ嬢とイワノフ氏が飛行機を動かすシーン(P291〜297)とか。
 ステラ嬢とからむとイワノフ氏は途端に苦労性+不幸体質になりますなぁ。しかし彼を見てると、一龍さんの所の“との”を連想するのは僕だけでしょうか。

 あと、トウジ君が基地についた際にマチェイ隊長と対面するシーン(P102〜107)ですね。マチェイ隊長に対して感じている悪感情を押さえるために自分に言い聞かせているシーンのトウジ君の心の台詞は何か『カーマリー』のオブザー侍祭を彷佛とさせるものがあって、「ああ、橘作品だな」と思いまして。

 シリアスシーンでは、お昼を食べながらトウジ君とステラ嬢が二人で話しているシーン(P132〜141)、トウジ君がマチェイ隊長の仕掛けた罠に引っ掛かってルーペを奪われてしまうシーン(P186〜195)、牢屋の中のトウジとズィグムンドが話し、トウジの父親についての真実が明かされるシーン(P207〜220)、あとはステラ嬢がイワノフ氏に、懺悔をして二人が協力しはじめるシーン(P220)から始まるクライマックスですかね。

 3、総評

 イイ作品だと思いますが、やっぱり『カーマリー』と比べるとストーリーの深さが足りませんかね。話の長さや題材から考えると仕方のないことですが。
 でもクライマックスはもうちょっと盛り上げられたんじゃないかって思います。トガ氏は割と邪魔をしてきたのですが、マチェイ隊長は、逃げる二人を後ろから売ってきただけだったのですが、直接相対して、それぞれの思うところをぶつけ合うシーンが欲しかったですね。

 あと方々で言われているイラストですが、確かに背景や正面からの人物像は上手いんですけど口絵のステラの用に変わった角度から書いた人物や、あと何よりもイワノフ氏、動物を書くのはあまり得手ではないようですね。
 誤植とかも目立ちましたしね。同時に13冊も新刊をだそうとして忙しかったっていう事情は分かりますけど。



 母さん、僕はやり遂げたよ……!(ガッツポーズ)

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