なか杉こうの日記
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2005年04月25日(月) 【雑記】「人身事故」

朝、駅に着いたら、途中で人身事故があり、電車の運転は見合わせということだった。仕方ないのでバスで次の駅に行き、私鉄で品川まで行った。その電車の混んだこと! もしかして明日休みをとろうかと思っていたのだが、遅刻して行き「明日休みます」とは言いにくくて諦めた。

これほどのこと。これを些細なこと、というのだろうか。遠慮して我慢してささやかな「自由」を求めて毎日働きに行く。働くこと自体は嫌いではない。ただそこには様様な人間がいるし、軋轢もあるし、そのなかでなんとかやっていこうとする。

そんな、月曜日。突如「人身事故」と言われる。電車に乗るつい五分前に途中の線路で、なんの事故かは知らない。けれど「また、飛び込んだのだろうか」と思ってしまう。

こんなことは何回かある、一年に。そのたびに何万人という人がやりきれない思いで職場に行く。黙って。ぎゅうづめの電車に乗り。途中で携帯をかけ。昨日はウイルスバスターの事故があったから、早く職場に言って手配しなければならない人もいただろう。

ぎりぎりと、砂を噛む思いだ。後ろ向きに生きたあるいは生きなかった人と、なんとか辛い中で前向きと言わないまでも、引っ張られるように生きざるを得ない人と。後者はいつも何も言わない。「・・・またか」と思うぐらいである。名も知らぬ人が事故にあっても・・・。

ぎゅうづめの電車から押し出されるようにして下りる。「ふうっ」と息をつく。こんな風にして勤めに行かなければならない何万人と、おそらく世界が暗闇の中で身を投げたかもしれない人の命とどちらが重いかといえば、命だ、と誰もが言うだろうか。

わたしの手のひらに見えない命が、消え去った命が載っている。それはもう、ないものだから、軽い。自分は朝は疲労があった。今はない。そんなふうだ。そんなふうにして、命がおそらく消えてしまった。何万人は今日も黙って仕事に行く。行けるだけ、幸いなのである。


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