2018年05月22日(火) |
サイレント・ブレス/南 杏子 |
大学病院の総合診療科の医師、水戸倫子は丁寧な診察で、午前の診察時間をいつもオーバーしていた。 十年目のタイミングで教授から、関連の訪問クリニックへの移動を打診された。 左遷だと思った倫子だが、これからの高齢化社会に向けて、医師の勉強は大学を離れてから始まるものだ、と諭されて異動が決まった。
ブレス1 スピリチュアル・ペイン 45才の乳がんの患者。 引き継いだ時点で余命半年と診断されていて、緩和治療が中心。
ブレス2 イノバン 22才の男性、筋ジストロフィー患者。 同居の母親がどうやら介護拒否しているようで、訪問看護とボランティアで生活を繋いでいる。
ブレス3 エンバーミング 84才の女性、老衰性の変化で日常の活動が著しく低下している。 長男の意向で本当は本人が望まない胃瘻手術をする。
ブレス4 ケシャンビョウ 推定10才と思われる身元不明の女児。 発見された高尾山の土産物店の老夫婦が面倒をみていた。 女の子は実際は12才で約3週間コンテナに押し込められて、日本で客を取るために中国からの人身売買で送りこまれてきていた。
ブレス5 ロンダターム・サバイバー 倫子の母校、新宿医大病院の72才、名誉教授。 膵臓癌で死ぬために自宅に帰った。 在職中は数多くの手術を手掛けてきたのに、自分は診療拒否をしたのだ。
ブレス6 サイレント・ブレス 脳梗塞の後遺症で意識が戻らない倫子の父は 、この半年毎月のように誤嚥性肺炎を起こし入退院を繰り返している。 薬剤師だった父は延命措置拒否の手紙を残していたが、母は父を失いたくないからとそれを倫子に言わないでいた。 でも最後は母を説き伏せ、倫子は父の点滴ラインを閉じた。
私が今一番興味のある終末期医療がテーマだった。 この本に限らずカタカナというか英単語は分からないから、それだけが少々心残り。
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