1998年05月21日(木) |
於雪・土佐一条家の崩壊 大原 富枝 |
太政大臣・関白だった公家の一条兼良が、応仁の乱以後、土佐中村に京都そっくりの町を作りあげて住みついた。この5代目の兼定が、当時九州第一のキリシタン大名豊後大友氏の娘を、政略結婚で正室に迎えたのがきっかけになってのちに入信し、おりから頭をもたげて来た長曾我部の領土を奪われるものの、熱烈な一キリシタンとして孤島で一生を終える。 ところで、兼定はまき狩りの夜に百姓娘の於雪を見そめて側室に入れ、その野性美をひどく愛した。 そんな中、小姓の左近という男が長曾我部のスパイとして接近してきて、斬られ、九死に一生をえるが不具同然になってしまう。同時に、領土を奪われ信仰第一の生活に入るのだが、栄華をきわめていた於雪も、ふたたび昔の百姓の生活にもどらされ、機を織り続けることによって孤独を慰める。 子どもの時から彼女に思いを寄せていた従兄が歩き鍛冶になっていて、ときどき於雪の文を兼定に届けてくれる。ある日、兼定自筆の写本『きりすとのおしえ』をことづかってくる。が、於雪は入信しようと努めるがどうしてもできず、昔の兼定の面影をはかなく追いながら薄命の生涯をおえる。
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