中学の文化祭の準備中、友達の伊藤くんの持病が悪化した。担任の男先生、保健の女先生、私が付き添い6駅先にあると言う名医の内科へ行くことになった。実は男先生は文化祭の準備に飽きていて外出したいだけだと私は知っている。私は女先生のことが好きだった。最寄り駅から乗車した。相変わらず伊藤くんの顔色は悪い。私は鞄からレジ袋を取り出して言う。「気持ち悪くなったらこれに吐いて良いからね」すると伊藤くんは前屈みになってゲロゲロとおう吐した。そうこうする内に目的の駅に着いた。スマホで調べると病院まではかなり歩くらしい。途中、コンビニに立ち寄ったりしている内に男先生とはぐれてしまったが、メールして無事合流出来た。
病院に到着した。そこは神社の階段のような急勾配な階段を登りきった場所にあり、高台には様々な小児科医が軒を並べている風変わりな景色だった。私の記憶が甦る。ここは確か私が幼児のころ頻繁に連れてこられた所だ。中庭の植え込みにカネゴンの石像が立っている。(あぁ...子供たちを安心させようと誰かが設置したのだろうな)と思った。小道を進むと小児耳鼻科、小児外科、小児歯科等が軒を並べており、それぞれの建物にも子供が喜びそうなレリーフが施されている。伊藤くんのかかりつけ医の建物を見付けた。それはまるでキュビズムの画家が描いたような風変わりなデザインで一見すると何処に入り口があるのか分からない。伊藤くんは小声で言う。「この建物の入り口はある場所に立って決まった高さから見ないと発見できないよ」しかし伊藤くんは"ある場所"を忘れてしまっていたので私達は各々ウロウロしてある場所とやらを見付けようとした。10分程して私は入り口を発見した。伊藤くんは益々具合が悪くなっている。一行は早速中に入った。かかりつけ医は、白髪の老人で奇抜な服装をしている。伊藤くんの診察中、時間を持て余した私達はキッズルームの大型テレビを観たり玩具で遊んだりしていた。女先生が私に話し掛けた。「こないだね、ネット通販でお高い肉を注文したのだけど届いてみたら酷い物だったのよ。店の評価は星5つだったのに!」「あの評価はアテになりませんよ。だって食べてもいない人間が不正につけているのだから」と私。2人でしばらく世間話をする。私はとても幸福だった。しかし彼女が実は男先生と婚約をしていることを知っている。
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