コミュニケーション。
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2007年12月02日(日) |
その手の理由を聞かせて。 |
「明日は、ドライブに連れて行こうと思ってたんだけど…」
あたしは優ちゃんのセリフより、 異様な動きをする彼の手に目がいっていた。
体温の高い彼が、 摩擦熱を求めて手をこすり合わせるはずはないのに、 まるでハエみたいにずっとこすっている。
「福岡国際マラソンがあるんだ…」
「お好きにどうぞ!」
手の理由がわかって、あたしは笑いこけた。 明日どこにも行かないつもりなのは、そのちょっと前にわかってた。 ハンバーグを食べに行く、と言ってたのに、 夕ご飯に余った餃子を、明日の昼飯だ、と言っていたから。
「だからマリがいいんだ、わがまま言わないから」
「優ちゃんにそんなにお願いされたら、誰だって許すでしょう」
あたしのためにプライドを捨ててくれる、あなたが好きよ。 前にもマラソンのために家にいたことがあったのに、 あたしがわがまま言わないってわかってるのに、 それでも手を合わせてお願いするあなたが好き。
優ちゃんの家でコーヒーを淹れるときは、 1袋ずつのドリップで、2杯淹れて、 1杯目を優ちゃん、2杯目があたし、である。
粉の量を自分で調節できないので、 2杯目は、色のついたお湯みたいなもんだ。 飲ませてもらってるわけだから、 文句を言ったことも、変な顔をしたこともないけれど、 多分、マラソンのお返しのつもりで、 昨日今日は、あたしの分に1袋、使わせてくれた。
あたしは、 お金のかかったプレゼントには、どんな顔をしていいのかわからなくなるから、 そういうお返しが嬉しいんだよ。 あたしがいい、と言ってくれるのと同じように、 あなたがいい。
思い通りの女の子が出来ない、と思ったこともあるけれど、 その分あたしは、好きなようにいられるのだ。 あたしの喉を撫でて「可愛い」と言うから、 笑顔で「にゃぁ」と返せるのだ。 甘えたがりのあたしには、大きな要素だ。 寺島には合わなかったし、 他の人には、そんな声を出す余裕がなかった。
前に書いた情事事情は、昨日も解消されなかった。 あたしが泣かなかったのは、何でだろう。
「お前みたいに性格のいいのはいないんだ」
泣かなかったからなのか、 それともいつもどおりなのか、 優ちゃんはそう言ってあたしを抱きしめて眠っていた。
これの理由はわからないが、 わざとあたしのセブン仲間の女の子を気にするそぶりをして、 あたしが妬いて、
「妬いたら嫌って言うくせに!」
と言うと、
「ちょっとは妬けってことだよ!」
とか言って笑っていた。
「嫌い、嫌い!」
と言って体の向きを変えようとしたら、
「きらいきらいも好きのうち〜♪」
なんて笑うから、腹の立つことったら。
そのまま後ろを向いたあたしにすり寄って、 優ちゃんが言う。
満足させられなかったことは、今日も悲しかったけど、 そう簡単に捨てたりしないって、 このプレイボーイが約束してくれたから、 思い切って信じてみるの。 これまでよりもっともっと。
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