コミュニケーション。
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2006年12月19日(火) 近くて遠い、男達。





いろんなことが一気に起こって、
寂しくなったり、
ハラハラしたり、
呆れたり、
怒ったり、だった。





出来る限りの距離で寄り添ってみても、
寺島の体温は感じられなくて、
本当はあるのかもしれないけど、
私には感じ取ることが出来なくって、
でも会えたのは嬉しくて、
もう何がなんだか、
何でこうなってるのかわからなくて、寂しかった。







ふと、寺島の手に渡った携帯に、
注意など払わなかった。
寺島は、携帯チェックが好きなタイプではないし、
大体、見られて困るものなど、ほとんどない。
…と、油断していた。
現在、着信履歴のトップがダレカさんであることを、
すっかり、本当にすっかり、忘れていた。

戻ってきた携帯の画面は、リダイヤル。
リダイヤルが見られたなら、当然、着信履歴も…
頭が回って、マズイと思った。
寺島は、私を見て、
ニヤニヤしていた。


…おかしい。
見たなら、怒るとか問いただすとかするはずなのに。
そのニヤニヤ以外、後の態度はいつもと変わらなかった。



これ以上探られては敵わない、と、
携帯にオールロックをかけた。
しかし、本当にリダイヤルしか見ていないのか、
寺島は、携帯を触ろうとはしなかった。
私の態度を観察している様子でもなかった。



ちなみに、
当のダレカさんの着信のとき、
私は気づいていなかったので、かけ直した。
それならばリダイヤルにも残っているはずだが、
私はリダイヤルをよく使うので、
使うたびに、自分がかけた証拠を見るのが嫌で、
ということは完全に気まぐれ、自己中で、
リダイヤルの記録だけは消していたのだった。


もしリダイヤルが残っていたら、
絶対に問いただされていた。
私のことだから、喋ってしまったかもしれない。
あぁ、危なかった。
ツイてる…(違うか)






藤原君も現れ、3人で過ごし、
(つったってYouTubeで笑ってるだけなんだけど)
10時も過ぎて、帰途に着いた。


藤原君が来たときからどうも、
寺島が藤原君に何か言いたげで、
私には件の着信履歴の不安があるので、
そのことかもしれないとハラハラしていた。

寺島の家の前に着いて、もう別れ際だったが、
寺島が藤原君に話したい事がある、と暗に言って、
私は、いてもいいのだろうか、
しかしさっきのことなら聞いていていいだろう、
と少し悩みながら様子を見ていたら、
寺島は私の横で喋りだして、
私に聞かれたくない、というよりも、
あまり私に言いたくないんだけど、という感じだった。

自分から喋りだしているのだから、大丈夫かな、
と思ってそのまま聞いていたが、
やはり喋りにくいらしく、
何についての話かも言わないし、
誰が登場しているのかも言わないし、
私はきょとんとしているばかりだった。


話の区切りで、
「マリちゃん、何の話かわかる?」
と聞かれて、
「わからないよ」
と答えたら、
「誰の話かわかる?」
と返ってきて、
私はどうせユミちゃんだろうと思っていたが、
ユミちゃんの話なら、今更隠しても仕方ないので、
どうにも違う気がする、と思って、自信がなかった。
「わからないよ」



結局タネ明かしをすれば、
寺島の大学で、電車が一緒になる同級生の話だった。
この人のことは1年生の頃から出ていたが、
寺島は、狙いたいと思っていたわけでもなく、
あちらも恋愛に奥手なタイプで、
目立った展開はなかったのだが、
最近の彼女の様子を見ていると、
ど・う・も、寺島のことを好きらしい、と。



これが、
ゼミで一緒なだけ、電車が一緒なだけ、なら、
んなわけないと一蹴できるのだが(ぇ)
本で口説きというものを覚えた寺島は、
本当にそこまではいかなくても、
「○○さん、可愛いのに彼氏いないなんて勿体無いね」
とかいう、
本人曰く余計なセリフを吐いており、
そして、
本人から聞いた「好きな人」の情報は、自分に当てはまる、
ということらしい。



私に聞かせたくなかったのは、
簡単に女の子にそういうセリフを吐いてたとなると、
怒られると思ったから、のようだ。

うん、当たりだよ(怒)




「でもわかるでしょ?!

相手が自分のこと好きかも、って思ったとき、

褒めたり、いじったりしたくなるでしょ?!」



と、言われたが、



「そうね、私もそうなるかも。

だけど、もし峰さんと別の人、

同時にそういう状況になったら、

私は峰さんにしか、反応は返さないわ。

だって好きなのは峰さんだから。

だから、

対象じゃない女の子にそうなる君は、わからない」


と、返しておいた。




雰囲気が悪くなったわけではないが、
私は怒ったような顔で会話を終わらせ、
寺島は、少し寂しそうな顔をして帰っていった。
でもユミちゃんがいるからいいでしょ、
と藤原に言ったら、納得していた。
いるのに、何であんな顔するのかなぁ、
と私に聞かれても、わかるわけないじゃない。


たまには、怒った顔で終わらせてもいいよな。





そして。
家に帰り着いて、


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オールロックにしていると、
データフォルダもロックになるので、
着信音は鳴らないのだ。
だから気づかなかった。
でも鳴られていたら困っていた。
寺島の前で出ることなど出来ないのに、
何度も鳴らすままにしていたら、不自然だ。


あぁ、何にせよツイていた。
どちらもろくでなしな男だけど、
私にとっては寺島のほうが大事だから。
ほっと胸を撫で下ろした。



…撫で下ろした後で、
着信の記録が全て、0秒であることに気づいた。
…全部ワンコか…
しかし、9時24分に0秒の発信を4回、
25分に同じく2回ってどういうことだ。

…酔ってたのか?
最近よく着信があるのだが、私は大抵気がつかない。
マナーにしていたり誰かと一緒にいて見ていなかったり。
気づいたときに、
「何ですか?」
と返すが、
次の日に謝るとか用事を聞くとか、一切しない。
だって、したいと思わないからっ。


あっちだって、
「昨日は云々かんぬん」
とかいう連絡をしてこないあたり、
似た者同士なのだ。




雪絵 |MAILHOMEBLOG

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