出会いって不思議だなあと思った。 今回はめちゃくちゃ長いので読まないほうがいいかも。 会社に入って、いろんな人に出会って、なんか心のとげとげが取れた気がする。人の話を聞くのが苦手だったし、あんまり人の話を聞かなかったけど、「人の話を聞くってこういうことか!」と思った。 と言うか、まあ、とあるきっかけで、おもしろい人に出会ったの。男の人なんだけど。その彼のことは、おーくんと呼ぶことにしよう。 そのおーくんがね、すごくパワフルな人で、私が辞めた会社の元社員でね、とにかくすごく元気がいいの。まあ、私も元社員だけど、会社にいた時期は全然かぶってなくて、なんて言うか、まあ、とにかくちょっとしたつながりで知り合いになったの。 それで、おーくんといろいろ話してて、おーくんが私に説教をしていて、私はうんうんって話を聞いてたんだけど、突然「おまえはちゃんと話を聞いてない!」って私のことを怒ったの。 私としてはちゃんと聞いてたつもりだったんだけど、おーくん曰く「ちゃんと話を聞いてたら、そういう質問にはならない!」とのこと。質問の仕方が間違ってたらしい。 質問云々はどうでもいいとして、とにかく、「話を聞いてない!」って怒られたのは初めてだったからびっくりした。 それから、私、聞き方に気をつけるようになった。おーくんと話したのはそのときだけだけど、それ以外のときでも気をつけるようになった。私は人と話してるときにいつもどうやって相槌してるかなとか、話を切り返すときどうやってるかなとか、自分のくせみたいなのを気にしてみた。 私いつも「そうそう。でもね」って言葉を返すくせがあるって気付いた。人の話が終わってから、必ず「でもね」って言う。内容が「でもね」で続くような内容じゃなくても、とにかく、いつも私って、相手の言葉を「でもね」って否定して自分の話をしてた。 これは人に言われて気付かなくて良かった。先に人に気付かれてそこを注意されたらへこんでた。 今まで気付かなかったけど、私、人の話を聞いてないっていうか、受け入れてなかったんだと思う。私と話した人はきっと、否定ばっかりされて、楽しくない気持ちになったと思う。 それから、人の話を聞くようになった。言葉を聞くようになった。みんながどうやって話を切り出すのか、気をつけてみるようになった。粗探しをするような気持ちじゃなくて、どういう受け答えがスムーズかなあって聞いてみるようになった。そしたら自然と言葉を選んで話すようになった。 おーくんは「おまえは話を聞いてない!」としか言わなかったけど、たったそれだけのことで自分の何かが変わるってすごいなと思った。あの会社に入らなかったら、こういう素直な気持ちを忘れてたかもしれない。「私は」「私が」ばっかりだったなあって思えた。 おーくんは「おまえは素直。洗脳されやすいから気をつけろ」とも言った。本当にそうだと思った。 それにね、なりたい私が見つけられなかったけど、それが見つかった。性格いいねって言われる人になりたい。自分をちゃんと持っている人になりたい。どこにいても、どんな仕事をしても、誰とつきあっていても、それは変わらないことだと思った。 それがどういうことかって言うと、良いことと悪いこと、好き嫌い、そういうのをはっきりさせることだと思った。いちいちそれを人に言わなくてもいいから、心の中で「私はこう思う」というのを持っていること。私はいつもなあなあで、わりと人に流されがちで、自分でちゃんと考えずに、人の言うことを鵜呑みにしがちだった。自分なりに考えてたつもりだったんだけど、足りなかったみたい。 なんて言うか、世間体を取り繕うために嘘ばっかりついてた。嘘と言うと大げさかな。ごまかしてばっかりいた。自分の選択に自信が持てなくて、隠さなくていいことを隠そうとしたり、そういうこと。「いい子」のふりをしてて。自分で自分のことを「性格が悪い」とか「ずるい」ってわかってたから、それがばれないようにしてたんだと思う。誰に対してってわけじゃなく、なんとなくそういう風にしてた。清純じゃないのに清純そうにしたり、清潔そうにしたり、とにかく、外側だけ取り繕ってた。会社もそう。何でもそう。会社の名前が大きいところとか、正社員だとか、そういうので自分を守ろうとしてた。ごまかそうとしてた。 でも違う。私が本当になりたいのは、そういうごまかしじゃない。どこに居ても、「あの子は性格がいい」って言われる人。自分で自分のことを本当に好きになりたい。甘やかすんじゃなくて。私自身が、私みたいな人と友達になりたいと思うような、そういう人になりたい。突然そんな風にはなれないと思うから、小さなことから少しずつやっていこうと思う。できるところから少しずつ。 おーくんにも「おまえは素直で従順のようでいて、ところどころワガママ。中途半端。強い父親のせいで萎縮してるし、甘えて育ってるからワガママ」と言われた。「23歳くらいからやり直したほうが良いくらい」とも言われた。見た目年齢って、精神年齢が出るのかも、と思った。私、25歳くらいで言われることが多い。 なんかね、すごいと。当たっとうと。いきなり博多弁で申し訳ないけどもさ。下手な占い師より私の性格を言い当てとーとよ。 電話での営業をすると、そういう風になるみたい。いろんな人と話をするから、だんだん人ってものがわかってきて、そのうち本当にカウンセラーになるんだろうね。おーくんは「人を好きにならな、人のことはわからんよ」と言った。おーくんは人が大好きなんだって。自分のことも他人のことも、とにかく人が大好きらしい。「おまえは人が好き?」って聞かれて、「たぶん、好きじゃないと思う」って答えた。 私は人が好きじゃない。正確に言えば、好きじゃなかったって気付いた。好きになってもらいたいと思っていたけど、私は人を好きにならなかった。恋愛とかとにかくどういう場面でもそう。たぶん、私は自分を筆頭に、人が好きじゃなかった。人が怖かった。親子関係がうまくいってなかったせいかもね。「今こうやって気付けたから、これからは人を好きになれる」っておーくんは言った。そうね。そうだと思う。おーくんのカウンセリングのおかげで、一歩前進できそう。 恋愛感情でおーくんのことを好きになるとかはない。あんなうるさい人とはつきあいたくない。それこそ萎縮する。でもずっと友達で居て欲しい。ちなみにおーくんはO型。私と同じで、きっと友達は少ないと思う。あんなに言いたい放題言われたら、よほどの精神力がないと友達でいられないよ。 おーくんには私に彼氏がいることは話してある。そして「私は絶対に浮気はしない。浮気なんて最低」って言ってある。それは大嘘だけど、ついてもいい嘘だと思う。とにかく、そう言っておかなくちゃいけない気がしたから。おーくんは「おまえはまだ誰かとつきあうとかそういうレベルじゃないと思うよ。もっと自分のことちゃんとしてからじゃないと、その状態で誰かとつきあうのって、どうかと思う。今のおまえが選ぶやつってどんなやつかなと思う」みたいなことを言った。余計なお世話だと思った。 こんなおーくんだけど、ごくごくたまにでいいので(しょっちゅうは疲れる)、またいろんな話を聞かせて欲しいと思った。男女抜きに、こういう風に嫌味なくスパスパ本音を言ってもらえると、私はとてもうれしい。って言うか、今までこんな人に出会ったことがない。おしゃべりなこの私を3時間、ほとんど黙らせた人なんか初めて。私、いつも言う側の立場ばっかりだったから、言われる人はこんなにきついのかと思った。初体験だった。途中、本気で帰りたいと思った。 たぶん私、あんまり怒られたことがないんだろうなあって思った。親にもあんまり怒られてないというか、怒られても聞いてなかったというか。仕事上で怒られたりしたことはあったけど、性格や生き方を怒られたのが新鮮だったんだと思う。 にゃんことのつきあいは少し考えた。にゃんことつきあうより、私はもっといろんな人と交流して、もっと自分を磨く努力をしたほうがいいのかもしれないと思った。私、今まで「これでいい」って凝り固まってたところがあったかもしれない。騙されやすいとは思ってなかったし、洗脳されやすいとも思ってなかったし。いつの間にか、少しずつ知らない私になってたみたい。昔の私はもっとしっかりしてて、自分の思ってることをずばずば言ってたような気がするけど、今の私はどうやらそうじゃないらしい。ずっとそうだったのか変わったのか、その辺はわからないんだけどね。 私、今まで自分の殻に閉じこもってて、全然外に出ようとしなかったんだなあって思った。今の会社に入って、自分を出して、そうすることによって、自分の殻から出れたような気がした。やっと外から自分を見ることが出来た気がした。 退職の手続きのときも、上司に本音を話せたし、私も上司も泣いた。私はほとんど号泣だった。やっぱりね、続けられなかった自分のことが悔しかった。上司にもそう話した。たぶん、私の気持ちをすごくわかってくれたと思うし、上司もたぶん、逃げれるなら逃げたいよって気持ちだったと思う。私のように身軽じゃないし、背負ってるものが大きいから(代表取締役なので)、辞めたくても辞めるわけにいかないから、きっと私のことをうらやましくもあり、歯がいかったと思う。上司だって、辞めたいことが何度だってあったと思う。 上司は『何かを続けるのは大変なんです。やりぬくのは苦しいことなんです。それでも、意味のあることなんです。価値のあることなんです。すごく残念です』って言った。言葉には重みがあった。『ご期待に添えず、申し訳ありませんでした』って言いながら私が泣いたら、上司は『ご期待に添えなかったんじゃない。期待にそえるまで努力しなかっただけです。許しません』と言って泣いてた。私はその上司のことはすごく好きだった。面接をしてくれたその上司に憧れて入社を決めて、良かったと思ったし、そのことも伝えた。30分くらい話した後、上司は出口まで見送ってくれた。「ありがとうございました」って笑顔でお別れした。いろいろあって辞めることを決めたけど、入社したことも辞めたことも、良かったと思った。あの上司のことは一生忘れたくない。 出会いって大事だなあと思った。にゃんこと二人の生活もすごく楽しかったけど、やっぱりもう少し自分を磨かなくちゃいけないなって思った。にゃんこが戻ってくるまでにはまだ時間があるから、その間に私が成長したら、にゃんこのことを好きじゃなくなるかもしれない。 そうなったらそうなったときよね。 ・・・さみしいけど。 同期で一番に退職した佐姉にも「亜紀ちゃんまだまだ30歳やない。これからよ。私の年までにはあと8年もあるとよ。8年よ。焦らんでいいとよ。1年後、3年後、5年後、そうやって考えたら、まだまだなんだってできるよ。私だってこれからもがんばるつもりやしね。自分に合う仕事が見つかるまで探してみたらいいよ。あんまり考えすぎずにもっとラクに考えてみて。もっともっと楽しくね!」って言われた。佐姉、なんてやさしい人。心が軽くなった。 そうよね。通過点に過ぎないのよね。30歳なんて。「もう30」って思ってたけど、「まだ30」なのよね。人生長いんだから、焦らなくていい。少しずつでいい。少しずつでいいから、良い方向に変わっていければいい。こんなに素敵な人にたくさん出会えたんだから、私は運がいい。素敵って思えるものに出会えるってすごいことよ。私さえその気になれば、これからももっと素敵な人に出会えるんだと思う。
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