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2021年01月17日(日) コロナが明けたら……

「わ、おいなりさん!」
職場の休憩室で弁当箱の蓋を取ったら、椅子ひとつ分空けた隣席で先に昼食を食べていた同僚が声をあげた。
「家でつくったん?」
「うん。何日か前から食べたくって」
「へえ、私つくったことないわ。ごはんの中になにか具入れてるん?」
回転寿司店でその皿に手を伸ばすことはまずないが、油揚げを甘めの煮汁でふっくら炊いたいなり寿司を無性に食べたくなることがたまにある。スーパーで買ってもそこそこおいしいのだけれど、自分でつくれば酢飯に甘辛く煮たにんじんやしいたけを入れてもっとおいしくできるし、なにより好きなだけ食べられるもんね。
そう答えようとしたとき、唇に人差し指をあて「シーッ」とジェスチャーをする別の同僚の姿が視界に入った。
……おっと、いけない。お昼を食べながらのおしゃべりは禁止なんだった。
ぜったいにクラスターを出してはならないと、緊急事態宣言が発令された昨春から、昼の休憩は三交代になった。壁に向かって配置されたテーブルに横並びに座り、食事中の私語は禁止。私生活でも家族以外と食事や外出をしないよう言われ、県をまたいで移動する際には事前の届け出が必要だ。Go ToトラベルやGo Toイートの恩恵を受けることはもちろんできなかった。

通勤途中、ジョギングをしている人をよく見かけるが、ほとんどがマスク着用である。運動場で部活動中の中学生もマスクをしている。
スーパーに行けば、「マスクをお忘れのお客様はサービスカウンターにて一枚単位でマスクを販売しておりますので、お立ち寄りください」のアナウンス。バスを待つ列に並ぶ人がマスクを着けておらず、ほかの人から「マスクお持ちじゃないんですか。乗るならマスクしてください」と詰め寄られているのを見たこともある。世界が変わってしまったことを思い知らされる瞬間だ。
いまやマスクなしでは社会生活を送ることができなくなってしまった。

年始に受け取った年賀状やLINEのメッセージの中に、「コロナが終息したら会いましょう」「コロナが明けたらごはんを食べに行こうね」という一文をいくつ見ただろう。これは転居を知らせるハガキの「近くにお越しの際はぜひお立ち寄りください」のような“挨拶文”ではない。
人と会っておしゃべりに花を咲かせるとか、おいしいものを食べに行くとか、安全に仕事をするとか。それがこんなに尊いことだったなんて。
一年前までは「普段」だったあの日々を取り戻せるのはいつになるんだろうか。



さて、今日は「こんなふうにまた友人と気軽に会ってごはんを食べに行きたいなあ」という思いを込めて、外食時のエピソードをお届けします(ただいまサイト統合のため、別サイトからログを移行中)。

2019年3月28日付  「好物を最初に食べるか、最後に食べるか

最初に食べる派、最後に食べる派、どちらの言い分にも一理ありますね。
ところで、好物を先に食べる人はたい焼きを食べるときも餡の詰まっている頭から、好物を最後のお楽しみにとっておく人はしっぽから食べるのでは……と想像しますが、どうでしょう(私は当たっています)。



【あとがき】
いま街で見かけるほぼ100%の人がマスクをしています。うっかりマスクを忘れたら、人と話すことも買い物をすることも電車に乗ることもできない。おじいちゃんやおばあちゃん、入院中の家族にはマスクをしたって会うことができないなんて。本当にせつないことです。