隣のテーブルで、大学生風の女子グループの会話がエキサイトしている。
「こっちはもう支払い済ませてるんやから、さっさと品物送って来いって話よ」
「メルカリで『即購入禁止』って意味わからん」
「事務局に通報したり。『購入手続きしたのに、勝手にマイルールつくって発送してくれない出品者がいます』って」
どうやらグループの一人がメルカリでトラブルの渦中にあるらしい。レア物を見つけ、すかさず購入ボタンを押し決済したところ、出品者から「プロフィールも読まず、購入前にコメントも送ってこないような常識のない人とは取引できない」と言われたという。
欲しい商品があれば、即座に購入ボタンを押す。それがメルカリでの買い物の仕方であり、出品者に「購入してもいいですか?」とお伺いを立てる必要はない。だから、この出品者はたとえ購入者のことが気に入らなくとも、速やかに商品を発送しなければならないのである。
メルカリは誰でも簡単に物を売ったり買ったりすることができる便利な場所だが、敷居が低い分、出品者と購入者の間で揉めることは少なくないようだ。
私の周囲でも「値下げ交渉に無理して応じたのに返事がないまま、結局購入されずじまい」「発送した品物が受取人不在で戻ってきたので着払いで再送したいが、連絡が取れない」「届いた品物に商品説明になかった不具合があったが、出品者が返品に応じない」といった話はときどき耳にする。
他人事ながら、面倒くさいなあと思う。手軽さが売りのはずなのに、本来なら必要のない対処に時間と神経をつかわなければならないなんて。
私はめぼしい物を見つけたら、これまでの取引評価を見て優良出品者を選ぶのはもちろんだが、プロフィールも必ず見る。そこにマイルールがいくつも書かれていたら、敬遠する。先日もちょっと気になる物があったのだけれど、「いかなる理由でも返品不可」「即購入お断り。購入されても発送しません」と強気の言葉が並んでいたため、縁がなかったと思うことにした。
「腹が立つけど、今回はキャンセルしたら?ぜったい『悪い』の評価をつけてくるやん、そしたら気分悪いで」
となだめる声に、心の中でそう、そうと頷く。どんなにレアな物か知らないけれど、今後あなたの出品物に関心を持った人がその評価を目にすることを考えたら、全然お得じゃないと思うな。
ところで、メルカリはオンラインのフリーマーケットであるが、こういう日記サイトもバーチャルな空間に開いた個人商店みたいなものではないだろうか。
客層が厚く評判の大型店あり、お客はほぼ長年の常連さんという地域密着型の店あり、知る人ぞ知る隠れ家のような名店あり。サービスの行き届いた店があれば、お客におもねらず店主のこだわりがよく伝わってくる店もある。
そしてこのたび、私もその界隈に小さな店を構えた。多忙につき、月1回程度の更新となるだろう……と書いたら、「そんな頻度でやる意味があるの?」と不思議がられそうだ。でも、「書けるときに書く」というマイルールに従い、ほそぼそと営業していけたらと思っている。どうぞよろしく。
【あとがき】 日記サイトと一口に言っても、そのテイストはさまざまですね。誰にも自分の好きなタイプの文章があって、自然とそういう日記をブックマークしているのではないでしょうか。そうですね、私は自分の思いや考えを淡々と綴っているような日記(とくに長文の)が好きです。 |