2007年06月29日(金) |
ナントカにつける薬はない、と言うけれど |
読売新聞の人生相談欄を読みながら、「そうそう、そうなのよお〜っ」と激しく相槌を打った。三十代の主婦からの相談で、
「夫が台所の流しで手洗いやうがい、歯磨きをすることに抵抗があります。不衛生だからと注意しても直らず、洗い物が置いてあっても使うので困っています。どうしたら洗面所を使ってくれるようになるでしょうか」
というものである。
うちの夫もそうなのだ。外から帰っても手を洗ったりうがいをしたりはまずしない人だが、歯くらいは磨く。家中をうろうろ歩き回りながら。
「行儀悪いなあ。それに歯磨き粉が飛び散るやん」
「らいじょうぶ、くちあけてらいから(大丈夫、口開けてないから)」
と言いながら、デーッと歯磨き粉を垂らす。ほら、言わんこっちゃない。
が、それ以上にやめてもらいたいのが洗面所に戻らず台所で口をすすぐことなのだ。つけおきの鍋があってもおかまいなしだからとても嫌。
相談者の夫は「小さい頃から洗面所のない家で育ち、水を使うことは台所でするのが習慣になってしまっているので、つい……」ということだが、うちの夫の場合はただの横着。リビングで磨いた後、洗面台より流しのほうが近いからである。
食べ物や皿を洗うところで口の中のものを吐き出すなんて汚い、という感覚は彼にはまったくないらしい。このあいだも雑巾を流しで絞り、妻を猛烈に怒らせたばかりなのだ。
結婚して六年半。夫の面倒くさがりにはほとほとあきれている。
タンスの引き出しは開けたまま、服はあちこちに脱ぎ捨てる、濡れたバスタオルをソファの上にポイ、外が明るくなろうが暗くなろうがカーテンは開けない閉めない、トイレットペーパーを使い切っても交換しない……。
挙げるときりがないが、もっとも理解に苦しむのは手の届く範囲にゴミ箱がないと床にゴミを放置することである。
「ちょっとお、床にほかすのやめてよッ」
「捨てたんじゃないよ、いまゴミ箱がないからとりあえず置いてるんだ」
後で捨てたことなんてもちろんない。だから彼が座っていた周辺には紙くずやビールの王冠が転がっている。
我が家の夫婦ゲンカの半分は彼のずぼらさが原因だ。家の外では、つまり仕事が絡むと超がつくほど几帳面なのに、その反動か、家の中ではとことん労力の省エネをするのである。
そして、彼のだらしなさがマックスになるのが実家に帰ったとき。
縦のものを横にもしない父、面倒見がよく働き者の母を見て育ったからだろう、夫も義弟も家の中では本当になにもしない。義母や義妹、嫁が食事の支度をしている最中でも「お箸取ってえ〜」「ビールもう一本〜」。テレビを見ながら涼しい顔をして言うのである。
どちらかといえば私も世話好きなほうだが、忙しくしているときに頼まれるとかなりイライラする。だから自宅では「あのね、妻はいまごはん作ってて手が汚れてるの。だから自分でやってちょうだい」とはねつけるのだが、あちらにいるときはそうもいかない。私がしなかったら義母を動かすことになってしまうから。
帰省するとストレスがたまるのは、気を遣うからというより、ふだんにも増してずぼらになる夫が好きになれないことが大きい。
「私はあなたのお母さんのようにはできないし、そうなるつもりもないからね」
と私は家でよく言うが、義父の前で夫に、
「あなたね、家事はなにひとつ手伝わないんだから、せめて自分のことくらい自分でしたらどう」
なんて言えるわけはなく、同居なんかしたらたちまち神経がやられてしまいそうだ。
で、冒頭の相談に戻る。
今回の回答者は作家の出久根達郎さん。いつも人情味溢れるアドバイスをする人で、ぜひ私もよい方法を教えてほしいワと回答を読みすすめたら。
「かくいう私もその昔、台所を洗面所がわりに使い、妻に非難されたことがあります。でも流しは洗面所より広々としていて使い良いのですよ。いかがでしょう、この際、洗い物を置き去りにせず心置きなく流しを使えるようにしませんか?夫に改めてもらうより簡単ですし。我が家もいまでは妻公認で顔を洗ったりしています」
だって。
ナントカにつける薬はない、と言うけれど、横着者を治す薬もないみたい……。
【あとがき】 家の中をうろうろしながら歯を磨く人っていますよね。大学の時女の子の友達の家に行ったら、台所に歯ブラシがあったので不思議に思っていたら、そこで磨き始めてびっくり。ちゃんと洗面所があるのにどうして〜!?と思ったのでした。 ドラマでも男の人が歩き回りながら歯を磨くシーンを見かけるし、けっこう多いんでしょうね。でも私は歯磨き粉が飛ぶのでヤだ。 |