日曜の午後スーパーに行ったら、男爵いもの大袋が百五十八円というお値段。
「中国産のじゃがいも、とか言わないでしょうねえ?」
と確認したら、ちゃんと国産。魚料理にするつもりでいたのが、一瞬でコロッケの気分に切り替わった。
ふだん私は家でほとんど揚げ物をしない。台所の掃除が大変なのと、外食がちな夫の健康を考えてのことであるが、コロッケだけはときどき無性に食べたくなることがある。そんなときは大量に作って冷凍しておく。
合い挽きミンチ、玉ねぎと干し椎茸のみじん切りを炒めて塩こしょう、ウスターソースなどで味付け。茹であがったじゃがいもは熱いうちに皮を剥き、すりこ木で粗くつぶしたらミンチと混ぜ合わせて一個ずつ小判型に……なあんて、あらためて作り方を書くことまでもないほど簡単。
なのに千切りキャベツをたっぷり添えて揚げたてにソースをかけて食べると、三個くらいぺろっといっちゃいそうなくらいおいしい。
コロッケにはとても思い入れがある。
いま私が家で作るのはビーフコロッケ、カレーコロッケ、肉じゃがコロッケくらいのものだが、食品メーカーの商品企画の部署にいた頃は旬の素材を使ってありとあらゆる試作品を作った。コロッケにならないものはないんじゃないかと思うくらい、キャベツでもトマトでも豆でもほうれん草でもポテトコロッケになるのだ。
野菜以外でもたとえばこれからの時期であれば、ピリッと七味の効いたキンピラコロッケや豚キムチコロッケ。ビールに合うと人気だったし、原価が高すぎて商品化はされなかったものの南高梅を使ったものも酸味が爽やかで悪くなかったなあ。
じゃがいもの代わりに里芋で作った和風コロッケはあんまり売れなかったが、私にとっては一番の傑作。カレーソースやビーフシチューといった具をおにぎりのようにじゃがいもで包み込む俵型コロッケを考えるのも楽しかった。
そして秋、冬はクリームコロッケ。海老、カニ、コーンはもちろん鶏、ホタテ、サーモン、きのこ。これには毎回苦労したっけ……。
手鍋での試作では簡単にできるトロトロのベシャメルソースが、工場でロット生産するとなかなか再現できない。どうしてもぼてっと固くなってしまうのだ。十個、二十個を手で作るのと、三百、五百という単位で機械で作るのとがまったく同じにならないのは当然と言えば当然なのだが、これでは売れない。
「ベシャメル、もうちょっとこう、とろっと流れるようになりませんかねえ」
「無理やな。言いたいことはわかるけど、これ以上柔らかしたら成型できん」
「でもこれじゃあ“クリーム”コロッケとはとても言えませんよお!」
工場に入り込み、生産担当者とやり合ったのが懐かしい。
* * * * *
……とこのあたりで、記憶力のすばらしい方からは、
「あれ?小町さんちってコロッケは夕食のおかずにしないんじゃなかった?」
と突っ込みが入るかもしれない。
そう、うちの夫はコロッケが夕食のメインだといい顔をしない……のは以前書いた通りである(2005年2月18日付 「それは夕食のおかずになるか」参照)。
なので当時はミンチカツや一口カツも一緒に揚げていたのだが、いまはもうコロッケならコロッケだけ。
「えーと、今日はコロッケ(だけ)……?」
「ゴチャゴチャ言うなら食べんでよろしい」
二年の歳月が私を変えてしまいました。
(今日はちょっとグルメ日記風に……って写真を載っけただけだけど。いっぺんやってみたかったの)