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2006年08月28日(月) 2006夏旅行記〜アムステルダムにて。

充電完了。本日からまたよろしくお願いします。

今年の夏はまずオランダへ飛び、二泊したあとスペイン・バルセロナから客船に乗り、イタリア三都市とフランス・ニースに寄港するクルーズをしてきた。
ハプニングやトラブルもあったけれど、とても楽しかった。今日は最初の滞在地、アムステルダムで印象に残っている場所や出来事のいくつかにお付き合いください。


「オランダ」と聞いて、あなたはなにを思い浮かべるだろうか。
風車や木靴、チューリップといった牧歌的風景?それともゴッホ?アンネの隠れ家?ハイネケンビール?
私はこれらにもうふたつ追加したい。ドラッグと売春だ。

アムステルダムの街のいたるところで見かける、「コーヒーショップ」という看板。といっても、客にコーヒーを出す店ではない。
オランダでは十八歳以上であれば、マリファナやハッシシといったソフトドラッグは五グラムまで所持していても罪に問われない。「コーヒーショップ」という名のソフトドラッグ販売店で気軽に吸引したり、購入したりすることができるのである。日本では「私、マリファナやってます」は口外できることではないが、あちらでは酒やタバコと同じ“嗜好品”扱いのようだ。
よって店内は薄暗いとはいうものの、人相悪くもいかつくもないごくふつうの男女が会話を楽しんでいるように見える空間である。なにも知らない観光客が「カフェ」と勘違いして入って行ってもちっとも不思議はない。

前を通ると、不思議な香りが漂ってくる。
「オランダではむしろタバコの害のほうが問題視されてるんだよ」
と中を覗き込む夫。やーよ、いくら日記のネタになるからって、そこまでする気はないわ。
「第一、あなたが売ってもらえるわけないでしょう」
童顔の夫は海外に行くとしばしば「高校生か?」と言われる。店に入ったら、「ここは子どもの来る場所じゃない」とたちまち追い出されてしまうだろう。
これは説得力があったらしく、彼はおとなしく引き下がった。

ダム広場を抜けて少し行くと、運河沿いに派手な看板が並ぶ町並みが現れた。「Red Light District」「飾り窓地帯」と呼ばれるポルノショップや売春宿が集まった風俗街だ。
オランダでは二〇〇〇年十月に売春が合法化された。つまり、それが一般の企業活動として認められているのだ。ガイドブックには「麻薬売買が行われる大変危険な地域なので、近づかないのが賢明」とあるが、アムステルダムに来てここを訪ねないわけにはいかない。

いくつかの理由で夜行くのはためらわれたので、明るいうちに行ったところ……。そこは拍子抜けするくらいあっけらかんとしていた。
窓には赤やピンクのけばけばしいカーテンがかかっており、日が落ちてからであれば妖しげな雰囲気になりそうであるが、昼間は観光客らしき女の子のグループがキャッキャッ言いながら写真を撮っていたり、子どもの手を引いた若い夫婦が歩いていたり。
しかしそうはいっても、通りに面した大きな窓々にブラジャーとパンティだけを身につけた女性が立っていて、道行く男性に手を振ったり、投げキッスをしたり、ときには窓から顔を出して声をかけたりする姿には思わず「す、すごい……」。なるほど、「飾り窓」とは女性をショーウィンドウに並ぶ商品に見立てての表現だったのだ。
もっとも、みながみな営業熱心というわけではなく、「かったる〜」とでも言いたげにタバコを吸っていたり、パンをかじっていたり、雑誌を読みふけっていたりという窓もあったけれど。
私たちの行く前を、白人の中年男性があちらの窓、こちらの窓に立ち寄っては値段交渉をしている。結局折り合いがつかなかったらしく、彼はあきらめたように広場のほうに歩いて行ったが、交渉が成立すれば男性は部屋に通され、シャッとカーテンが引かれるわけである。

ここまで読んで、男性は「どんなにきれいな人が立っているんだろう?」と想像力をかきたてられたかもしれない。
しかし残念ながら、「えっ、この人もそうなの?」と驚くような女性も少なくなかった。でっぷりと肥えていたり、かなりとうが立っていたり。二階の窓でスタイル抜群の金髪のお姉さんが悩ましげなポーズをとっていて、通りにそれを見上げる男性の人垣ができているのを見たけれど(なんてわかりやすいんだ……)、ほかには美人だとかセクシーだとか思う女性はいなかった。
もっとも、そういう女性は窓辺に立つ暇などないのかもしれないし、そこで客になる外国人男性と私とでは美の基準といおうか、顔立ちや体型の好みが違うということも考えられるけれど。

それにしても、オランダはセックスに関する事柄になんて寛容、というかあけっぴろげな国なんだろう。
日本なら大人のオモチャ屋さんにしか売っていないような卑猥なものがふつうの土産物屋に並んでいるのだ。絵はがきの写真もえげつないほど露骨である。
雑貨屋の店頭に、実物大の男性器のオブジェが目玉商品のようにびっしり並べられていた。
「こ、こんなものを部屋に飾ってどうしろと言うの……」
わなわなしながら手に取ってみたら、先端に塩や胡椒を入れるようになっていた。なんだ、キッチン用品だったのか。
……ってなおのこといらんわい。

* * * * *

「ドラッグだの売春だのエッチグッズだの、そんなものしか見てこなかったの?」
と言われてしまいそうだが、そんなことはない。風車にのぼったり、アンネの隠れ家で入り口の回転式本棚が意外と小さかったことに驚いたり、ハイネケンの博物館でビールを飲んだりもしてきたもん。
しかしオランダを語ろうとするなら、このあたりのことを避けては通れないではないか(ほんと?)。

次回は、スペイン・バルセロナで信じられない失敗をした話を。