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2004年05月28日(金) そんなつもりじゃ……(後編)

※ 前編はこちら

ある男性とどのくらい純粋な友人関係であるかを説明するとき、女性はしばしばこんな例えをする。
「彼とは同じ布団に入っても、ぜったいなにも起こらないと思う」
私がそれを耳にするたび思うのは、「ま、うらやましい」ではなくて、「まるで危なっかしさのない関係なんてつまらなくないのかな」ということだ。
私は友人であっても、「男の魅力」というものを感じさせてほしいと思うほうである……などと言うと、恋愛するわけじゃないんだからそんなものいらないじゃないと言われてしまいそうだが、私は「男」であることをこちらにまったく意識させない男性にはあまり興味が湧かないのだ。すなわち私が友人と呼べるくらい親しくなるのは、ときには理性で自分を律する必要があるくらい魅力を感じている男性、ということになる。
こんな私であるから、彼らの中で性別を超えた存在になりたいと思うこともない。いくら人間として認めてくれていても、「こいつとどうこうなんて、太陽が西から昇ってもありえない」と思われるのは不本意である。「友人」という言葉で言い表す関係ではあるが、私の場合、男性と女性とではその成分は同じではないようだ。
よって、「友人であってもそちら方面のことをつい思い浮かべてしまうものだ」というAさんの言葉は決して不愉快な事実ではない。
しかしながら、そんな勝手な!とひんしゅくを買うことを覚悟で言うと、えいっと腕をからめたときに「えっ、じゃあ今夜いいの?」と目を輝かせるのではなく、「ったくしょうがないなあ」とでも言いたげなクールな表情で左脇を緩めてくれる……そんなシチュエーションが私の理想なのだ。
内心はどきどきしているのだけれど、それはおくびにも出さない。自分たちの関係においてそういうスキンシップが適切なものでないことを理解していて、「今日だけだからね」と諭しつつ付き合ってくれる----早い話が、「私より大人の男性であってほしい」というリクエストである。
しかし、Aさん曰く、「男の性欲は女性のそれの三十倍」。「腕を組む」の延長線上に「ホテル」はないとか、“イケナイこと”も一瞬思い浮かべてほしいけど、それは私には見せないでとか。これを男性に理解してというのは、やはり無理な相談か……。
そろそろ「いい加減にしろ!」と石つぶてが飛んできそうなのでこのへんにするが、「そんなに大層なことだとは思ってなかった」というのが正直な感想である。
それにしても、こういう話を書こうとすると、材料をすべて過去から調達してこなくてはならないのがナンだなあ。こういうときは「既婚者ってツマラナイ」とちょっぴり思う。
以上で後編はおしまい。

実は前編をアップしたあと、たくさんのメールをいただいた。
「腕を組まれたらホテルに誘うのが礼儀とすら思う」といった男性の声が届くことはある程度予想していたが、驚いたのは、何人かの女性からの「スキンシップしたいなんて思ったことないですよ!」というもの。
え、もしかして私だけ?と思ったとき、私の中に湧きあがってきたひとつの疑問。じゃあ世の中にはどうしてこんなにハグ好きがたくさんいるの。
以前あるオフに参加したら、私を除く四人のうち三人が「ハグっていいよね」「あいさつがわりにするよ」な人で、私はええ!と声をあげたものだ。
昔から日本にある習慣であるなら、どういう種類のスキンシップであろうが「そういうもの」と思えるが、ハグはそうではない。そのアクションだけを見れば、「抱き合って頬を寄せる」なんて瞬間的とはいえ、腕を組むよりもずっと密着度が高いではないか。
その証拠に、別れ際にそれを初めて経験したとき、私は猛烈に照れてしまったのである。私にとっては腕を組むよりこちらのほうがよっぽどシャレではできない。
が、ハグをする人たちがそのたびにムラムラしているとは思えない。ハグはへっちゃらでエッチな気を起こさないのに、腕を組むとどうしてとたんに色っぽい方向に思考が行くのか……。
この差はなんだ?誰か説明してほしい。

【あとがき】
どうやら私は性別を切り離して人間を見ることが苦手みたい。男の人は男の人であってほしくて、自分も誰の前でも女性でありたい。私の場合は友情の延長線上に恋があるんだと思います。うん、もちろんそこにまで達する友情はきわめて少ないけれど。いままでそういうところに誘われたり、「俺のこと好きなのか?」なんて勘違いされたこともなかったから、向こうも同じように「いまだけもうちょっと盛りあがりたい」だとばかり思ってました。 こんなこと言ったらどつかれそうだけど、「そんな大層なことだったとは」というのが正直なところで、私にとって「腕を組む」というのは他の人ほどハードルの高いことではないんだなとわかりました。世間との基準のずれに気づいていないのって、まったく傍迷惑な話ですね。今後は気をつけます……って私に今後はないのでありました。いまごろ気づいても遅い!