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2004年04月30日(金) ささやかな復讐

多くの人は「復讐」などというおどろおどろしいものとは無縁の生活をしていると思うけれど、「リベンジ」という言葉で表現できるようなライトなものであれば、誰でも一度や二度は考えたことがあるのではないだろうか。
たとえば女性が自分を振った男性を見返したいと思ったとき、一番に浮かべるのは「綺麗になって、惜しいことをしたと思わせたい」ではないだろうか。
『ポンズ ダブルホワイト』のコマーシャルは、街で昔の恋人に偶然再会した女性が、彼から届いた「まいった。見ちがえた」というメールを読んで勝利の笑みを浮かべるというストーリーだったし、坂井真紀さんの「絶対キレイになってやる!」(TBC)は当時かなり話題になった。ユーミンの『幸せはあなたへの復讐』の中にも、「もっと私綺麗になるから 呼び捨てにできないくらいに」という歌詞があったっけ。
実際、振った振られたに関わらず付き合っていた女性がうんと綺麗になっていたら、男性は内心複雑なものがあるのではないだろうか。

いつか街で偶然出会っても
今以上に綺麗になってないで
たぶん僕は忘れてしまうだろう
その温もりを 愛しき人よ さよなら
(Over/Mr.Children)


とくに振られた男性には、これ以上ないくらい堪えることであるらしい。「綺麗になる」が相手の心をかき乱すのに有効な手段であることは間違いない。
とはいうものの、私自身はこの「綺麗になって見返したい」というのをほとんど考えたことがない。別れた人とは連絡を断つのが常だし、居住地が離れていることが多かったため、「街でばったり」がありえない。綺麗になったって見てもらえるわけじゃないしね……。二度と会うことのない人を思って吐き気をもよおすほどまずい黒酢を飲んだり、甘いもの断ちをする気にはならない。
私が奮起するとしたら、いま隣りにいる人と、これから出会う人のためだ。

そんな私が失恋直後、痛みから逃れるために企てたささやかなリベンジは「忘れること」だった。
私が別れた人と音信不通になるのは「もう顔も見たくない、声も聞きたくない」からではなく、彼の中で自分が「完全に終わった」ことを知らされたくないからだ。喪失のショックだけですでにこんなにぼろぼろなのに、そのうえ相手が自分のことを過去の出来事として片づけてしまったことがわかったら……。
だから、私は唇を噛みしめる。
「置いてけぼりにはなるまい」

聞こえなくてもいい
届かなくても 知らなくてもいい
最後の日 君は忘れられるのが
一番辛いよって 言ってただろ?
だから僕は 君を忘れてやる
たとえもう君が別にそんなこと
どうでもよくても
(revenge/槇原敬之)


たとえ声も届かぬほど、背中も霞んで見えぬほど、引き離されていても。もうあなたが別にそんなことどうでもよくても。
「私のほうがぜったい先に忘れるんだ、ぜったい」
そして、私は囚われつづける。

【あとがき】
別れた人にはいつまでも素敵でいてほしいなと思います。そして、幸せに暮らしていてほしいとも。
大学時代に付き合っていた年上の男性と同窓会のようなもので再会したら、すっかり愚痴っぽくなっていて軽くがっかりしましたね。まあ、いろいろあったんでしょうけれど。