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2003年12月13日(土) 名古屋ひつまぶしオフ(前編)

枕元の電話が鳴り、手探りで受話器をあげアラームを止める。
「えーと、ここは……」
見慣れぬ天井を見つめたまま、あたまの中のモヤが晴れるのを待つ。そうか、私は二日前から名古屋に来てたんだ。ああ、昨夜は楽しかったなあ……。
つぶやいたとたん、寂しくなる。そうだ、あのふたりは?(名古屋手羽先オフレポート参照)
真っ当な家庭人である彼らは早朝の新幹線に乗って帰阪することになっていた。時刻は午前八時、もう発ったのだろうか。
手早く身だしなみを整え、ロビーに下りる。この上なくエコノミーなホテルだったが、一応簡単な朝食がフロント前に用意されている。ソファに腰掛けてコーヒーでも飲んでいるのではないか。
「あ、小町さん、おはようございます。早起きじゃないですか」
「櫻屋さん、まだいたんだ!もう行っちゃったかと思ってました」
「そのはずだったんだけど、誰かさんが寝坊しちゃって。ねー、そうさん?」
「ははは、申し訳ない……」
こんな会話ができるのではないか、とちょっぴり期待して。
が、そこには誰の姿もなかった。私はクロワッサンには目もくれず、とぼとぼと部屋に戻った。
ホテルをチェックアウトし、地下鉄の駅に向かう。名古屋といえば、誰がなんと言おうとひつまぶし。「2002夏出産・・・の割に育児ネタが少ないKKの日記」のKKさんと「ひよこ日誌」のひよこさんとお昼に食べに行こうと約束をしているのだ。
ひつまぶしをご存知ない方はいないと思うが、そう、うなぎの蒲焼を短冊切りにしたものをお櫃の中のご飯にのっけたもの。食べ方がユニークで、一杯目は茶碗によそいそのままいただき、二杯目はあさつきと刻み海苔、わさびをのせて。三杯目は二杯目と同様にトッピングをしてからだし汁をかけ、お茶漬けにして。これが実においしいのだ。
今回私たちが訪ねるのは、『あつた蓬莱軒』の本店。ひつまぶしの老舗としては『いば昇』も有名である。なのにどうしてあつた蓬莱軒を選んだかというと、いば昇のそれは人数分まとめて大きなお櫃に入って出てくるため、茶碗に取り分けるときに、
「あっ、小町さんのほうがうなぎが多い」
「そんなことないよ、細かいこと言わないの」
「ひどい、私のが一番少ないじゃない!」
なんてことにならないように……というのはもちろん冗談で、いば昇では一度食べたことがあるから。そんなわけで、あつた蓬莱軒の本店のある伝馬町駅の改札口で十一時に約束をした。

それにしても初対面の人との待ち合わせというのは、どうしてこんなにドキドキするのだろう。
私は人見知りしないしあがり症でもないけれど、何度経験しても慣れることがない。「あの人かしら、この人かしら」ときょろきょろしている様子を到着済みの相手に見られるのがはずかしくてたまらないのだ。
ゆえにそういうシチュエーションではいつも早めに行き、やってくる相手をこちらから見つけることにしている。待ちの態勢でいるほうが心にいくらか余裕が持てる気がする。
そして、今回もそんなふうにしてKKさんとひよこさんと「はじめまして」のご対面。KKさんからは「全身黒ずくめのオバサン風の女性を探してください」と言われていたので、どんな老け顔の女性が現れるのだろうと楽しみにしていたら、思いっきり年相応のはにかみ笑顔がかわいいママさんが登場。
彼女と私は同い年であるだけでなく、夫の年齢や結婚した時期、ふたつ下の妹がいるところまで同じで、以前からとても親近感を抱いていた。そのためか初対面という気がせず、すっかりタメ口。
そこに「遅れてごめんなさああい!!」という叫び声が。見ると、階段を転がり下りてくる女性がひとり。あっ、ひよこさんだ。
その様子があまりにも私が思い描いていた「優しくて子ども好きで、ちょっぴりおっちょこちょいなひよこ先生」そのままだったので、思わず笑ってしまったではないか。(後編につづく)

■こちらのオフレポもぜひご覧あれ。
2002夏出産・・・の割に育児ネタが少ないKKの日記(KKさん)/12月7日付
ひよこ日誌(ひよこさん)/12月7日付

【あとがき】
一度だけメル友だった男性と待ち合わせしたことがあります(メール交換を始めて三年目に入ってからのことだから軽くないでしょ?と言い訳しておく)。あのときはそれはもう緊張しました。ドラマじゃあるまいし、こういう場面ではたいてい「……。」な人が現れて、「やっぱりそんな甘くないわよね」となるのがお決まりのパターンだと思うのですが、私に声をかけたのはかなり素敵な男性でした。「こういうときのあいさつはやっぱり『初めまして』なのかな?」と言われて、しどろもどろになってしまったことを覚えています。
で、その人とはどうなったかって?ははは、それはよしておきましょう、何年も前の話だし。まあ、私にもそんな時代があったのね、ということで。