過去ログ一覧前回次回


2002年11月14日(木) 中国三大びっくり(前編)

無事中国から帰ってきました。
六時四十五分起床、八時にはホテルを飛び出す毎日。次またいつ来られるかわからない、ひとつでも多くのものを見ておきたいという気持ちで、寸暇を惜しんでとにかく歩いた一週間だった。
万里の長城、故宮、兵馬俑坑など五ヶ所のユネスコ世界遺産を訪ね、中国の伝統芸能「京劇」「上海雑技団」を鑑賞し、北京ダックに餃子宴、上海蟹に小籠包といった名物と呼ばれるものも総ナメ。こんなにハードな旅はしたことがなかったけれど、こんなに充実した旅もまたはじめてである。
さて、「どこがよかった、なにがおいしかった」なんて話はガイドブックを開けばいくらでも書いてあるので、この旅レポでは私の感動体験をお話しようと思う。名づけて、小町の中国三大びっくり。

まずは食べ物について書きたい。
といっても、「十元(百五十円)も出せばおなかいっぱいごはんが食べられて安っ!」とかそんな話ではない。中国の人が「空を飛ぶものは飛行機以外、四つ足のものは机以外なんでも食べる」と言われるほど野味を好む人種であるというのは聞いてはいたが、実際に私は何度も彼らの食に腰を抜かした。
一日目の夜、「北京ダックといえばここ」という有名な店で食事をしたのだが、コースの中の揚げ物に添えられた見慣れぬ物体に目が釘付けになった。
体長五センチ、黒くて昆虫っぽい。なんだかとっても不吉な予感、すでに鳥肌スタンバイ。
顔を近づけてそれが何かわかった瞬間、私はひいっと小さな悲鳴をあげてしまった。サソリだったのである。
「サソリの唐揚げ、とてもおいしいです。体にもいいね」
店員さんが笑顔で言う。
「いったい誰が食べるんですか……」
「みんな好きです。子どもも食べます」
こんな気味の悪いものを食べるだなんて信じられない。もしかしてからかわれているのだろうか。
が、「本当に本当なのか」を繰り返していると、「これを食べないで帰るなら、うちに食事に来た意味がない」と言われてしまった。
で、どうしたのかって?ええ、ええ、食べましたよ、食べましたとも。行儀の悪い話で恐縮だが、しっぽの先っぽをつまみ(本当は触るのもイヤ!)、口の中に入れるところまではなんとか。しかし、どうしても舌の上に乗せることができない。
「やっぱり無理ー!」とテーブルに突っ伏し、意を決してはまた挑戦……の繰り返しで、結局それに対峙しはじめてから咀嚼するまでに三十分かかった。
お味のほうはと言うと、これがよくわからない。なんせあわてて飲み込んだものだから。
しかし友人が言うには「味はなかった。でもカリカリしてて小海老の唐揚げみたいだった」そうだ。

何十軒もの屋台が立ち並ぶ北京の夜市では、ヒトデにざりがに、イモ虫にセミにキリギリスなど、ゲテモノとしか言えない串揚げがどの店にも品揃えしてあって呆然。
「こんなもの誰が注文するんだ!」と思ったら、隣の若いカップルが食べていて愕然。タコを食べない国の人は「よくあんなグロテスクなものを」という目で日本人を見るようだが、彼らにとっては私の視線がそれに当たるのだろう。
食は中国に在り。食文化の奥深さを身をもって知る貴重な体験だった。だけど、野趣あふれすぎる素材はやっぱりNOだ。

残りのふたつのびっくりは次回の日記でお届けします。
話変わって、「ラブレター・フロム・チャイナ」をリクエストしてくださったみなさんへ。
私はなにかに感動したり驚いたりすると、すぐに誰かに話したくなるクチ。今回も旅の経過を報告しようというよりは、「ちょっと聞いてえ」という気分で書きました。
横から覗き込んだ友人に絶句されてしまった代物ですが(なぜかは受け取ったらわかるかと)、心を込めて書きました。おしゃべりを聞いてくれてありがとう。

【あとがき】
北京ダックも上海蟹もコースで200元(3000円)。日本では信じられない値段です。中国は食べ物が安くておいしい!食いしん坊にはたまりません。ふだんスーパーでは中国産の野菜や肉は買わないようにしている私も(残留農薬や肥育飼料があやしいから)、この旅では名物を味わい尽くしてきました。西安の餃子にパオモー、上海の小籠包、刀削麺もすばらしく美味だったなあ。欧米に一週間いるといつも和食が恋しくなるけど、今回は全然。それどころか帰りに駅で551の豚まんを買って帰ってしまったぐらい。あー、おいしかった。