2002年04月19日(金) |
人にお願いするならば |
最近、私のメールボックスで不思議な現象が起きている。
一年ほど前、「友人からカスピ海ヨーグルトのタネをもらって育てている」と書いたことがあるのだが、いまになって「タネを譲ってください」というメールが相次いで届いているのだ。
先月の終わりから七、八通になるだろうか。中には某テレビ番組の制作スタッフを名乗る人からの「話を聞かせてほしい」というものもあった。
巷で流行しているんだろうか。それとも、『発掘!あるある大事典』や『おもいッきりテレビ』ででも取り上げられたのだろうか。いままでそんな問い合わせは一件もなかったのに、ここにきて大量発生しているので、同じ人物がメールアドレスを変えて出しまくっているのでは、と勘ぐってしまうほどだ。
いやいや、メールが届くこと自体はどうということはない。「暮れに帰省する際、世話ができなくなると思って、タネもろとも食べ尽くしてしまいました」と断りのメールを送ればいいだけの話だ(これ、本当)。
では、なぜあえて書いているのかというと。それらのメールをもらっても、私は「まあ!日記を読んでくれたのね」と素直に喜ぶ気持ちにはなれなかったからだ。
以前、海外在住のある日記書きさんがこんなことを書いておられた。彼の元には見知らぬ人から、「今度旅行に行くので、ちょうどいい服装を教えてください」「観光スポットはどこがありますか」といった内容のメールがしばしば届くのだそうだ。そして、そのテのメールの送り主は初めてやりとりするにもかかわらず、ろくに自己紹介もせぬまま、すぐさま用件を切り出してくるという。ガイドブックを見ればすぐにわかることを調べようともせず、人の手を煩わせることをなんとも思っていないらしいメールの送り手に対し、その日記書きさんは不快感をあらわにしていた。
それを読みながら、「たしかに感じ悪いよなあ」とつぶやいた私だったが、実はいま、似たような気分の中にある。
特徴的だったのは、「タネください」メールの中に、私の名を正しく書いてあるものが一通もなかったことだ。ちょっと探せば、私が「小町」だということはすぐにわかるのに、それらのほとんどに私の名は登場しない。
宛名があっても、メールのアカウントから「komachi20さんへ」としてあるもの、ひどいのになると、コピペで同じ文面をばらまいているのだろう、見知らぬ人のハンドルネームが記されているものまであった。
「こんにちは。突然ですが、お願いがあります。カスピ海ヨーグルトをわけてもらえませんか。お返事ください」
どれもこれも判で押したみたいに、この文面。名乗ってもいなければ、日記を読んだとも書かれていない。親しみのようなものをどこにも見いだすことのできないメールに、誰がなんとかしてやろうと思えるだろう。
こんなふうに思うのは、私がハンドルネームやサイト名といった固有名詞の扱いには思い入れを持っているからだろう。
誰かにメールを送るとき、私がもっとも神経を使うのは内容ではなく、ハンドルネームとサイト名を間違えずに書くことである。ひらがなか、カタカナか、漢字か。アルファベットの綴りは合っているか。宛名や住所を書き損じると新しいハガキに取り替えるように、メールを書くときもこの部分でだけは失礼はすまいと思う。
また、私はくだけた調子で書きたいとき以外は、冒頭のあいさつに相手の名を入れるようにしている。私の「○○さん、こんにちは」は、親愛の情と「あなたに書いています」のささやかな表明だ。
これはこちらの勝手なこだわりだから相手に伝わっている必要はないのだけれど、こんな私だから、用件しか書かれていないメールにはうんざりしてしまうのだろう。
人に何かをお願いするときには、それなりの気遣いやマナーというものがある。単刀直入も結構だけど、初めての相手にコンタクトを取るときくらいはそのあたり、ちょっと考えてみるといい。成果をあげたいのならね。
【あとがき】 日記を読んでくださった方から寄せられた情報では、先日『ズームイン!!SUPER』でカスピ海ヨーグルトが取り上げられて、「タネは市販していないので、手に入れたければネットをあたってみましょう」と案内していたのだとか。そういえば本文の中に書いた「某テレビ番組制作スタッフ」って、「ズームインを担当している〇〇」と名乗っておられたな。メールに「電話ください」とあったけど、連絡せず。フリーダイヤルならまだしも、どうして東京までかけなきゃいけないの。なにはともあれ、「なんで今さらカスピ海ヨーグルト?」と不思議に思っていたので納得しました。 |