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**** ウチのお嬢(=本名:モカ)の犬エッセイ集です ****
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2004年10月27日(水)
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犬エッセイ《ダックス・イン・ザ・パーク》―3―「営業」
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ダックス・イン・ザ・パーク
DACHS IN THE PARK
ハラタイチ 書き下ろしロングエッセイ―その3―
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別名「犬バカ日誌3」。
3
(1を読んでいない方へ。 注…「お嬢」=「彼の愛犬であるメスのミニチュアダックス」)
店中の視線がお嬢に集まっていた。店中が肩で息をしているように感じた。
お嬢は犬への奇襲営業を再開している。そして、お客のうちの一人がお嬢の傍へ座った途端、
お嬢の営業モードが即座に人間用に切り替わった。それも安易に飛び込まない初対面バージョンである。
お嬢は初対面の人間への営業時は必ず、陸上自衛隊顔負けの匍匐(ほふく)前進で擦り寄っていく。
床にお腹が付く位の姿勢で四肢を高速運動させるので、活きのいいゴキブリのような動きに見える。
お嬢が初対面の相手に匍匐前進する理由を、彼は「好奇心と警戒の極限での融合」と判断していた。
今、お嬢が匍匐前進していく先のこの女性が、お嬢の本日の最初のお客さまであった。
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【1人め】Yさん(女性/32歳)、ジョン(ミニチュアダックス/2歳)
「わ〜小さ〜い。この仔何ヶ月ですか?え!五ヶ月〜?!一・三キロ?!、小さいですよそれ!
カニンヘンじゃないんですよね?、私んとこなんか見てくださいよ、もう五キロ超えてるんですよ。
六キロなったらもう本格的に「ミニチュア」を疑わなくちゃいけない感じで、え〜そうなんですか〜、
あれですよ、六ヶ月経ってもこの大きさだったら、多分ずっとこのくらいの大きさですよ!
え〜いいな〜、ジョン!見てごらんよ、こ〜んな小さいよ、お前はぶくぶく大きくなって!!」
ジョンが心なしか、しゅんとしてたような気がした。この犬はクリームとブラックタンの仔で、
レッドながらも耳や尻尾の先にクリームや黒が交じっている個性的な毛色のダックスであった。
Yさんにお嬢が撫でられている隙に、ジョンはお嬢のお尻をくんくん嗅いでいた。お嬢に圧倒されっ
放しの挨拶だったが、やっとジョンから挨拶出来たところであった。無論、お嬢は気付いていない。
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【2人め】Rさん(女性/31歳)、ユウタ(ミニチュアダックス/1歳)
「ちょっと抱いてみてもいいですか〜?わ〜小さ〜い、ぬいぐるみみたい!ちょっと、
うちの子供に見せてあげたいわ。五ヶ月には見えないですよこの仔、あ〜顔立ちもいいですね」
Rさんのダックスのユウタは、完全にお嬢にビビっていた。身体は三倍ぐらいあるのだが。
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【3人め】Kさん(男性/38歳/ペットカフェ店長)、ゴロ(仮名/トイプードル/4歳)
「え〜この仔、五ヶ月なんですか〜?」とKさんが彼に話しかけている隙に、なんとお嬢は
ゴロ用の水皿を見つけるや否や、勝手に鼻を突っ込んで、ぴちゃぴちゃと舌鼓を立てていた。
「こら、てめっ!」と彼はリードを引っ張りながら、「水なら俺が持ってるから、こらっ!」
と云って止めさそうとしたが、Kさんが彼を制して、「あーいいのいいの、飲ませてやってよ」
とお嬢に水を勧めた。彼は恥ずかしさに顔が赤くなり、「す、すみません」と謝った。
しかし思いの外長い間、お嬢が図々しくも水を飲み続けていたため、彼はリードを手繰り寄せ、
「いい加減にしろ、こらっ!」とお嬢を捕まえた。(何か問題あって?)とばかりに彼をキッと睨む。
K店長は棚の整理をしながらその光景を見て笑っていた。だが、彼は気にせずにはいられなかった。
お嬢に水を獲られたゴロが、泣きそうな顔で彼の傍に近付いて来た事を。彼はゴロを撫でてやった。
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【4人め】Lさん(女性/27歳/ペットカフェ店員)、メグ(仮名/シーズー/1歳)
店長と一緒に笑っていたのが、店員のLさん。皿を拭きながら笑顔で彼に云った。
「元気いいですね〜。散歩してる仔でこんなに小さい仔は初めて見ましたよ〜、かわい〜。
そこに首輪とか売ってますけど、その仔の首のサイズはSSの18センチのものでも、
多分全然大きいですよね〜」彼は、ごく自然に首輪の営業をかけられている気がした。
彼は陳列されている一番小さい首輪を手に取って見た。確かにお嬢の首周りには全然大きい。
それを見て彼は、散歩をし始める仔犬の大きさが、世間的にどのくらいのものなのかに少し気付いた。
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この店をお嬢は完全に制圧してしまった。店を出る時も、お嬢はまだ物足りないのか、
リードを引っ張って戻ろうとしている。皆が手を振って見送ってくれた。この時彼はふと思った。
一時的ではあるが、冴えない気分が少しばかり回復して来たような気がした。
お嬢のテンションに引っ張られて、高ぶって来た自分を感じた。まったりと過ごすという予定とは
異なる方向に進んでいる違和感と、こういう社交的なイベントもありかな、と思い始めている自分が、
彼の中で半々の割合となりつつあった。通りに出ると十月の午後の陽が常温の暖かみをもたらしていた。
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公園へと通りを渡る横断歩道の手前で、またしてもお嬢が立ち止まった。
振り返ると、腰を屈めたお婆さんへ向かって、お嬢が匍匐前進していた。
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【5人め】Yさん(女性/66歳)
【6人め】Sさん(女性/38歳)
【7人め】Tくん(男の子/10歳)
お嬢が近付いていったのは、66歳になるYさんであった。Yさんは顔を綻ばせながら、
「お〜よしよし、いい子だね〜」と、まるで初孫を迎えたかのようにお嬢を抱きかかえた。
お嬢は完全に甘えたモードに入って、身体をYさんに預けていた。
「この仔、どのくらいなんですか?」Yさんの娘でTくんの母親らしきSさんが彼に訊いた。
彼が五ヶ月だと云うと、やはりSさんも驚いていた。どうやら家でダックスを飼っているらしい。
お婆さんは、まるでお嬢が何歳だろうと関係ないらしく「孫」に夢中になっていた。彼はその光景が、
本当の孫であるTくんがお婆さんにとってもう「目に入れても痛くない」モードから外れてしまった
からだろうか、などとかなり失礼な事が頭に過った。そのTくんはじっとお嬢の動きを見つめている。
母親がTくんに、「ちょっと抱かせてもらいなさい」と云って、お婆さんがTくんに近付けたのだが、
テンション高めのお嬢に押されたのか、Tくんは少し触っただけですぐに手を引っ込めてしまった。
「あれ?家で飼ってるのに苦手なんですか?」と彼がSさんに訊いたところ、
「あ、いやね、この子が小さい時に、うちのがTの手を噛んだ事があってね、軽くだったんですけどね、
その時の事がなかなか離れないんだと思うんですよ、嫌いじゃないみたいなんですけど、どうもね…」
と説明してくれた。Tくんは手を引っ込めた後も、お嬢をじっと見つめていた。
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お婆さんからお嬢を受け取った後、信号で待っている間、そして公園へ向かって横断歩道を渡る間も、
彼は周囲からの視線を強烈に感じた。事実、すれ違う人々は必ず、顔を180度近くターンさせて、
少なくとも五秒以上は彼の足元に視線を向けていた。(もしかして俺はナルシストなのか?)と、
疑ってしまう程に彼は見られている事を感じた。二人は衆人環視の中、公園の門をくぐっていった。
(4につづく)
...
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