うららか雑記帳
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2019年02月03日(日) |
『Unnamed Memory』ダイマ |
とにかくオススメなので是非読んでみてください! ハイファンタジー好きなら沼に沈むこと請け合いです。 作者さんは元々個人サイトを運営してらして、「このweb小説がすごい!」に2作品もランクインしたわけですが、そのうちの片方がこの「Unnamed Memory」。 電撃文庫から発売された「Babel」に続いて待望の書籍化ですよー! 電撃さんが新たに立ち上げた単行本メディア、その記念すべき第一弾の一角に選ばれたというだけで期待値の高さが分かりますね。 厚みと重さが嬉しい、装丁もイラストも美しい単行本となっております。 キャラデザ的にオスカーはもう少しふてぶてしいほどの泰然とした雰囲気を纏うイケメンを想像していましたが、全体的に前線に立つ貴人感が強くて良き良き。
以下感想。ネタバレありのため要注意です。
書籍化にあたってかなりブラッシュアップされ、キャラクターの描写が増えていたり伏線が分かりやすくなったりと、初読の間口がより広くなった印象。 改めて読むと主役コンビのかけあいが実に良い。「すごい! えらい!」と「非常識な話だ」には思わずくすっとさせられた。 物語的にはしょっぱなからなぜかバラバラ殺人事件の謎解きだけど、 さりげなく次のエピソードに繋がっていて、城の日常風景や武官たちの人柄が伝わってくるし、 祝祭という行事を通してファルサスの歴史や発展ぶりを想像できるという、導入部に向いているエピソードだった。 そしてページ半分もいかないうちに主要人物の腹に風穴が……。
あの二人組が思いのほかあっさりと退場していってしまって意外だった。 ラザルは何かにつけて泣いたり酷い目に遭ったりしていて通常運行で安心した。
ティナーシャの周囲への一線の引き方がしごく当然なものと思えるだけに、 それを軽々と飛び越してしまうオスカーの精神的安定感が飛び抜けていて、 鋼メンタルの早期完成ぶりを「さすがオスカー」とばかりに眺めるのだけれど、 時折ちらりと垣間見える青年らしい感情の発露に、読んでいるこちらがどきまぎさせられてしまう……。
印象に残った台詞はいろいろあるけれど、一番はルクレツィアの
「あなたは魔女である前に人間だからね」
さりげなくも重い。
続きが待ち遠しい。
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