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- 2004年10月09日(土) ∨前の日記--∧次の日記
- コーチって?


コーチングって知ってますか?
最近よく耳にしますね。つまり、コーチをすることです。

「あのテニスコーチは、あたしのものよっ」「コーチ!、あたしもっと強くなりたいっ!」

っていうところの、あの「コーチ」です。


では、コーチングと、
カウンセリング、ティーチング、アドバイジング、コンサルティングの違いって
説明できますか?似たような言葉ですね。




そういえば、アテネ五輪――、

・・・って、
ストやらイチローの安打記録やら、大きいニュースが立て続けにあったので、遠い昔のことのような気もしますが・・・

とにかく、今回の五輪ほど、コーチの存在の大きさを感じた大会はありませんでした。

メダリストの事後の記事や特集雑誌を見るにつけ、
今回のメダリストの裏には、必ずコーチの光る言葉があった気がします。


*******************

「最初の25mだけ前に出ようか」
男子100m平泳ぎ金メダリスト北島康介のコーチ・平井伯昌の指示。

前半型の世界記録保持者ハンセンに対し、北島は後半型。
予選、準決勝を見た北島と平井は、ハンセンが金の期待と五輪の重圧で相当緊張していると判断。
決勝でライバルのハンセンに勝つには、記録よりも駆け引き勝負がポイントとして、
最初の25mで一旦ハンセンより先頭に立つ作戦を二人で決めた。
平井の一方的な指示でなく、平井が北島に自分で作戦を考えさせたことがポイント。
結果、北島の最初のダッシュに焦ったハンセンが、ムキになって北島を抜き返したものの
固い泳ぎとなって消耗し、得意の前半で0秒04しか北島からリードを奪えなかった。
ターンして浮き上がった時にはすでに北島が逆転。前半の25mで平井コーチは勝ったと思ったと云う。



「メダル獲りたいなら、後半32秒台で帰ってこい」
女子200m背泳ぎ銅メダリスト中村礼子のコーチ・平井伯昌の指示。(北島と同じ)

中村は、昨秋、五輪前の大事な時期に、北島康介のコーチ・平井の門を叩いた。
技術的なことよりもメンタルを鍛えてもらうために。それにより中村は自信をつけ、見違えるように強くなった。
決勝前、平井の指示はひとつ、「メダルとりたいなら、後半32秒台でまとめろ」。
結果、中村はドイツ選手と同着の3位。後半50mは32秒99で帰ってきた。
33秒台だったらメダルは無かったのである。


「25km過ぎからスパートしろ」
女子マラソン金メダリスト野口みずきのコーチ・藤田信之の指示。

五輪史上最も過酷なコースを制したのは、他でもない、藤田の作戦であった。
32km地点を頂点とする登りのコース。特に28kmからの4kmは急勾配で、誰もが飛び出すことを怖がっていた。
飛びが大きく、登りが得意な野口を活かすのは、この4kmしかないと藤田は踏んだ。
普通のスパートをかけたら、ラドクリフやヌデレバを離せるわけがない。
だから急勾配手前の25kmで行け。それより早くても遅くてもだめだ、と藤田は指示した。
野口は指示通り、25kmでスパート。予想通りに誰も登り坂を追っていけない。
もぎ取ったマージンは30秒。下りに入ってヌデレバが詰め寄る。40kmで15秒に迫るが、
そこからが縮まらなかった。最後は12秒差を残してゴール。
おそらく、スパートが遅れてマージンが5秒足らなかったら、40km地点で一気に詰められていただろう。
絶妙の25kmというタイミングだった。


「ラスト10m、フェラーリのように加速しろ」
男子100m背泳ぎ銅メダリスト森田智巳のコーチ・鈴木陽二の指示。

若くてお調子者で伸び盛りの森田に、鈴木コーチが決勝前に与えた指示は、
自分が大好きなクルマのような加速でラストスパートしろ、であった。
度胸が座っている森田には、明快な数値目標でなく大事なのは「乗せる」こと。
ラスト10m、森田は追い上げ、3人横一線に並んでゴール。メダルを勝ち取った。


「焦らず、慌てず、諦めず」
女子800m自由形金メダリスト柴田亜衣のコーチ・田中孝夫の指示。

柴田は純粋で真面目、そして努力家だった。だからこそこの指示が活きたのだろう。
スタートして、当然のように金メダル候補のマナドゥがリードする。
この時は「焦らず、焦らず」と、落ち着いて自分のペースでレースに入っていった。
そして中盤。リードが広がっているが、あくまで自分のリズムを守らなければどっちみち勝てない。
「慌てず、慌てず」と云い聞かせて泳いだそうだ。
そして後半〜ラスト。先頭のマナドゥのペースが落ち、自分の前に相手の姿が見えてきた。
自分も苦しいが、がんばれば届きそうだ。「諦めるな、諦めるな」と懸命に追い上げて、
そしてゴール。コーチの言葉をひたすら自分に云い聞かせて力に変えた金メダルであった。


*****************



これらのコーチの言葉には、

「明快な目標設定をもった指示」
「選手との対等な立場にたった言葉」
「選手の性格と、タイミングを図った言葉」

が見て取れます。

コーチング如何で、実力通りの力を発揮させることができれば、
今回ぐらいのメダルをとれる世界的な実力が、まだまだ日本にはあるということが分かった気がします。



************************



さて、コーチングとは一体何だろうか?


これはスポーツだけでなく、近年はビジネスの世界でも盛んに取り入れられています。
私も去年、会社のセミナーにてコーチングの話を聞きましたが、
結構目からウロコの話もあったので、そこでの話に触れてみたいと思います。

昨年9月に名古屋で行われた、
コーチングセミナー(講師/C&C代表上野氏)の資料から一部を紹介。



1.まず、コーチングの3原則について

1.全ての答えと能力は、クライアントが持っている
2.コーチはクライアントの味方である
3.コーチは効果的な質問で、クライアントの答えを導き出す

とのこと。




2.それでは、冒頭の質問
コーチングと、カウンセリング、ティーチング、
アドバイジング、コンサルティングの違いは何?



下にまとめてみました。


カウンセリング
【コーチングと同じところ】相手の話をよく聞き、質問によって答えを引き出す。
【コーチングと違うところ】過去に向かって「WHY」と問いかけるのが特徴。
現在の問題は過去に原因があり、それを見つけ出すことが解決へつながるというスタンス。
コーチングは・・・・未来へ向かって「HOW」。これからどうするかが基本テーマ。

■ティーチング
【コーチングと同じところ】指導によって相手の能力を高める。
【コーチングと違うところ】画一的指導である
コーチングは・・・・相手に応じて1対1対応。教えないで考えさせるのが特徴。


■アドバイジング
【コーチングと同じところ】相手の問題解決に関して、客観的な助言を与える。
【コーチングと違うところ】「should」のスタンス。「こうすべき」という助言側の基準での指示。

コーチングは・・・・「let's」のスタンス。一緒に考え一緒にゴールを目指そう、という助言。


■コンサルティング
【コーチングと同じところ】相手に必要な情報を提供し、行動指針を示す。
【コーチングと違うところ】専門知識による指導助言。専門家の分析・指導。「答え」は指導側がもっている。
コーチングは・・・普遍的なスキル。
「答え」は相手がもっているというスタンス。
それを引き出す手伝いをコーチがする。




つまり、コーチングとは、対象となる相手と如何に共感できるか…というテクニックなのである。





3.おもなコーチングスキルの一例。
コーチングの話には、日常生活での人間関係に役立つ話が多い。



■「相手の話を傾聴(積極的に聞く)することから始まる」・・・他者理解の姿勢が相互理解を生み、共感を生む。

■「対象相手にすぐレッテルを貼らない」・・・貼られた相手が自分で自分を洗脳し、可能性を殺してしまう。

■「アドバイス・励まし・説得ではない」・・・指導側だけが良いと思う方向に、相手を引っ張ろうとしているだけ。

■「過去質問より未来質問をする」【なぜそうしなかったの?】より【これからどうしたい?】
人の問題の原因は過去にはない。今の自分が何だかんだ言って理由付けしている。
過去ばかり見ても問題は解決しないので、これからのことを聞いてあげて前向きにさせる。

■「否定質問より肯定質問をする」【なぜそうしなかったの?】より【どうしたら上手くいくと思う?】
上記と同。これから出来ることを話し合う。


■特に「なぜ、なんで、どうして」から始める質問は要注意!

ミスをしたスポーツ選手に、コーチが「なぜ、そんなことをしたんだ?」と聞くことは、
粗相をしたペットに「なんでそうゆうことするの!」と思わず口走っているのと同じ。

「なぜ」という理由を聞く疑問詞が、理由を問うているように相手には聞こえない。
責められているという事実しか頭に残らず、自己正当化に走ろうとする。(⇒防御)

相手を責めている感じにならないで、どうしても過去の原因を探求する質問を聞かなければならない時は、
「人」と「事」を分けて、主語や目的語を明確にして質問をする。

「人」に焦点・・・・「なぜあなたはそうしなかったの?」
「事」に焦点・・・・「そうしなかった理由は何?」


失敗はさておき、原因・理由を聞かれていることが、明確に相手に伝わるようになる。



************************


てな話が、コーチングには色々あったりするわけで、そこで思ったわけです。



別に指導的立場にある人だけが知ればいい話ではなく、
ビジネススキルを身に付けようとして、勉強する話ではなく、
単純に、自分のまわりの人間関係において活かせる、
円滑なコミュニケーションの方法論として、皆が知っておくべきことで、


皆が知っていれば、皆しあわせになるのになー


・・・と思ったのでした、コーチングって。




アテネの選手とコーチ、皆、お互いに抱き合って、
幸せそうでしたよね。




041009SAT
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