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2005年03月04日(金) |
歯医者とカメ。〜その3〜 |
歯医者さんでの治療も 残すところあと少し(多分)。 「根本から虫歯にならない事を考えた方が良いですね。ここの磨き方ですが」 「ふぇ〜」 こんな間の抜けたやりとりとも お別れになる。少しの間だろうが。 カメが見られなくなるのは少し残念だが、それより何より 治療がやっぱりやだし。
歯医者到着。早速、水槽のカメと 熱帯魚を見に行く。 小さな方のカメは水槽のこちら側に来ていて、何やら慌しく動いている(カメにしては)。 その下を熱帯魚が 悠々と泳いでいる。 さて、もう1匹のカメは何をしているかと探してみると、こちらにお尻を向けて じっとしている。 上からは、常に循環しているらしい水が流れており、その水の流れのままに身体が 揺れている。手足は伸ばしたまま、爪の先までだらりと伸びている。 顔はこちらからは見えないが、首も だらんと伸ばしっ放しだ。 「・・・・・・?」 この日に限って、呼ばれるまでに3分ほどあった。私はずっと カメを凝視していた。 大きいカメは全く動かない。伸ばした手足もピクリともしない。水の流れに任せて 自然に揺れているだけだ。 「・・・・・・し・・・」 死んでる? でもカメって 甲羅に潜ったまま死ぬのではないか?と一瞬考えたが、それはカタツムリ だったっけかと 思い直した。 子供の頃飼っていたミドリガメも、或る朝 ダランと伸びたまま死んでいた。
どうしよう、「カメが変です」と 受付の人に言おうか。 でも 仕事中にそんな事言われても 困るだろうなあ。 「焙煎さあん」 ああっ呼ばれた。よし、治療を終えて戻って来て、カメがあのままだったら 思い切って 受け付けのお姉さんに言おう。 「カメが死んでるみたいです」
その日は金属を被せるだけであったのだが、何だか気が気でない私。 「どこか高く感じるところは ありませんか?」 ここで妥協すると、変なところが腫れたりするし ちょっとしつこい位に快適な 口になるまであれこれ注文を付けたいところだ。 だが何となく、今日は頭の中が カメで一杯。「ふぇ〜ありまひぇん」 早く待合室に戻りたいのだ。 案外すんなりと治療は終了した。私はお礼を言って 大急ぎで診察室を出た。
水槽の前に行って見ると、手前に2匹のカメが揃っていた。「・・・・・・」 3分、全く身動きしなかったカメが、今は慌しく(カメにしては)動いている。 あれは何だったんだろう、寝ていたのか? と思った瞬間、小さな方のカメが 大きなカメの喉元に2回続けて噛み付いた。 歯がないくせに、すごく攻撃的な噛み付きぶりだ。 大きなカメは、向きを変え、泳いで逃げて行った。
苛められているのだろうか、大きなカメ。さっきは疲れて休んでいたのか? 毎日この有様なら、本当に いつか弱って死んでしまうんじゃないだろうか。 「焙煎さあん」 お会計だ。
「済みません、カメが苛められてます」 と言う言葉が出掛かったが 飲み込んだ。 幼稚園児の喧嘩ではないのだ。言っても止めないだろうし、或いはあれが 愛情表現 では無いとは、カメに詳しくない私には言い切れない。
とにかくお金を払って外には出たが、やはりもう少しカメの様子を見て行きたいん だけどなあと、いつものように考えた。
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