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最近読んだ本の中から面白いなと思った物を。
☆トルコ石の『青いバラ』。実は誕生石。
『青いバラ』・・・最相 葉月 (新潮文庫) 英語でBlue Roseと言えば「不可能、有り得ない事」を指すと言うのは 聞いた事があった。 高校時代であるがセントポーリアと言う室内植物を育てた経験がある。 咲けば大層美しいが ちょっと放置しておくと形が崩れたり枯れてしまう、捨て身で愛情を得ようと する姿が、私なんかは寧ろ ちょっと見習った方が良いんじゃ無いかと今では思う花である。 これは黄色が出ない。行きつけのお店が黄色のセントポーリアの写真をあしらって展示会の案内状を寄越した時は度肝を抜かれた。勿論 加工写真だったのだが、ちょっと止めてよな感じである。 今も黄色は無い筈で、だから鮮やかなオレンジも無い筈である。 だがこの先ずっと無いのかと言えば判らない。遺伝子操作で 有り得ない色素を入れる事が時に 可能となったからだ。これで今までに無かった花色が作り出されている。 だがすんなりと行かない物もあるらしい。花色を作り出すシステムはそれほど単純では無いらしいのだ。 『青いバラが出来たとして、それが本当に美しいと思いますか』 日本のバラ育種の第一人者である老人が著者に尋ねる。その一方で現役を退いて尚、老人は 青いバラに思いを馳せる。『千一夜物語』から『ツインピークス』まで、古今東西様々な作品で あらゆる意味合いを与えられて来た青いバラ。それは一体どんな青か。 夕闇のビロードの様な質感か、晴れた日の高い空の青なのか。 いつか進歩の名の元に、私達がそれを目にする日もあるのだろうか。 ちなみのこの方(さいしょうはづき)さんと読むらしい。「何か読めない名前の人なんですけど〜」 と言ったのに 探して出して来てくれた本屋のお姉さん、偉い。
☆デルフィニウムはデルフィニジンと言う青い色素を持つ。そっくりバラにとは行かない物らしい。
『ネグレクト』・・・杉山 春 (小学館) 赤い花の種から白い花が咲く事もある。だが、大抵は同じに赤い。栄養が足りないと花は痩せ、 過剰にしても枯れる事がある。頑固に拒否する子供の様子を見た親が むかついて「もう、いい」と放置して行こうとする。周囲が「ねえ、泣いてるよ〜」「戻ってやんなよ」とか言っても「いい」の一点張りだったりして、結局親子似てんじゃんねえと思うと 他人事なら可笑しいなあで笑って済む。 他人事ならだが。 良く調べてある。そして答えは無い。両親に対しては判決があるだけだ。 気になったのは拘留中の両親が共に「未来への希望と幸せ」を口にしている事。死んでしまった 子供には可哀想な事をしたが、自分達は今度はその子の分まで幸せになると。 「コンクリート殺人事件」と言う とりわけ心の底で風化させたくない事件があった。 当時未成年だった被告の一人がやはり「彼女と死んだ子の分まで幸せになりたい」と言ったと 何かで読んだ。非常に印象に残った。幼いとか非常識とか馬鹿とか言うより、何か向き合う物が欠けたまま 大人になってしまったのでは無いかと不安にさせられる。 「自分だけの神様」でも居た方が良い。人は常に何かに向き合っているべきだ。
『へんないきもの』・・・早川 いくを (バジリコ株式会社) イラスト 寺西 晃 特殊な環境で特殊な進化を遂げる。それがちょっと極端だったり変だったりしただけなのだ。 笑ったら悪い。悪いがここはやっぱり笑うべきなんだろうと思う。笑えない事が多過ぎだ。 オオグチボヤは笑ってる訳でもないのに笑っているし キンチャクガニは今日も何処かで イソギンチャクを両手に持ってチアリーディングをしているのだろう。 しかも二匹向き合って。 ブチクスクスの竹内力の顔となったイラストも必見だ。ややお高いけどお勧めの本です。 生物全般が平気で妙な物好きなら是非。
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