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| 2009年01月04日(日) ファミリーポートレイトby桜庭一樹 |
落ち込んでいる時は、さらに落ち込むのが良策。と聞いた。
失恋した時は、失恋の歌を聴く。やけ酒を飲む。やけ食いする。
だから私は、桜庭一樹さんの「ファミリーポートレイト」を読んだ。 昨年の11月末に購入したのに、未だに読まずにツンドクされていた本だ。
以下、感想文。
美人でアル中でDVな母マコと、その娘コマコの物語。 途中からは、コマコ一人でお話は続いていく。
「私の男」で感じた寒々とした空気感は、この小説でも健在。
ファミリーポートレイトの雰囲気。
マコとコマコの暮らし。
洞窟に迷い込んだ感じ。 冷たく湿気を帯びた空気で、身体の芯まで冷える。 出口を求めてさまよい歩く。 歩いていると、天井から冷たい水が落ちる。 「ひゃあっ」っとびっくりして、身体がすくむ。
ぼぅっと、遠くに灯りが見える。 裸足で、でこでこして水がたまった洞窟。 灯りを目指して歩く。 壁づたいに歩いていると、壁にはりついていたナメクジが手に触れる。 ぬめりとした感触が、手に残る。
好きな箇所。
老人ばかりの町を脱出するときの、雪崩が町を飲み込む様子。
養豚の町での話で、 プライドが壊れるさまや、豚の足だけが空中を闊歩するさま。
男子高校生に追いかけられて二階から飛び降りる所。 スピード感がある。
コマコが創り出した物語。
プラトンの娘の脳を中枢に置いた「空飛ぶ舟」の話。
などなど。。。。
ファミリーポートレイトを読んでいると、自分の事を書いているのかな? と勘違いする時がある。 そういう小説が、読者の心を惹きつけるのだ。 少し自分とだぶらせる事ができる小説。
たとえば私の場合、 美人の母親を持った娘の気持ち。 母娘が並んでいる時、それを見た人が不思議そうな顔でこちらを見る。とか。 「あの綺麗なお母さんの娘が、これ?」みたいな。
コマコの恋人が「コマコといると、よけいにさみしい」とつぶやく所。 私も、夫といると、よけいに虚しくて寂しい。(ばく)
救いがないような小説だけれど、 最後は、コマコが妊娠する所で終わっている。 洞窟の灯りが見えている。 出口はもうすぐだ。
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桜庭さんの小説が、好きです。 あの温厚なおっとりしたお顔のどこに、伶俐なナイフが隠されているのだろう? 桜庭さんの写真を見ながら、首を傾げてしまう。
私は好きだけれど、彼女の小説は一部マニア向けなのではないか?と 思ってしまう。一般受けは、しない…かな?
今回のファミリーポートレイトは、私の男を周到している。 私の男の呪縛から逃れていない。 空気感が同じだもの。 荒野や赤朽葉の伝説とは、違う。 どちらが好きかと問われれば、そりゃ、ファミリーポートレイトだけどさ。
1700円もする本を2日で読んでしまって、失敗したって感じです。 もっと、かみ砕いてきちんと咀嚼すれば良かった。 も一度、読むか。
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