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お通夜に行ってきた。
前日の朝刊に小さな記事。 夫が記事を指さして言った。 「おい、これ、橋ちゃん(仮名)じゃないかな?」
区内の河川で水死体発見。 事故と自殺、両面での疑いあり。 発見された遺体の特徴は、 がっしりした体型で五分刈り、etc。 服装は、 黒いTシャツにジーンズ、運動靴、etc。
「いつもの橋ちゃんの服装に、そっくりや」
「それなら、警察に電話して聞いてみたら?」 そう勧めてみたが、夫は気が乗らなそう。
「橋ちゃんちゃうか?あれは橋ちゃんやて…。橋ちゃんみたいや」
夫は、何度も繰り返しつぶやきながら仕事へ出かけた。
4時間後、夫からメールが来た。
「やっぱり橋ちゃんやった。明日通夜やから用意しといてな」
質素なお通夜だった。 お坊さん、なし。当然、お経もなし。 献花は使い回し。 お棺の前に祈りと共に並べられたお花は、途中で回収され、また会葬者の手に。
うちの店とは長い付き合いだった橋ちゃんなので、夫経由で店の常連さん達が 通夜に集まった。 強面おっちゃん達が勢揃い。 あとは、ヤンキーな女性数名。 この人たちが来なかったら、橋ちゃんのお通夜は相当寂しいものになっただろう。
橋ちゃんは、川に落ちて死んだ。 とても小さい川だ。 身投げなんてとても無理な、浅い川。 両手を伸ばせば、両欄干に手が届く遊園地の作り物みたいな橋。 冗談みたいな場所で、冗談じゃなく、橋ちゃんは死んだ。
さよなら、橋ちゃん。 いつかまた、会おうね。
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