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長女が泣いた。
気が強く見える人間ほど、実は精神的に弱く泣き虫だと思う。 夫も、ひどく泣き虫。 感情の起伏が激しい人は簡単に泣くのだと、私的に認識している。
長女が泣いた。
携帯に電話がかかってきた。 来春から勤める予定の会社・人事部からの電話だ。 来年の3月、新入社員の研修会が東京で開催される。 前回の説明会で告知された日時が変更になったので、その連絡だ。
それを聞いて、長女が泣いた。
その日は、ダンスの発表会の日だった。
たかがダンス、されどダンス。
長女にとって、ダンスは最も重要なものなのだ。
大学に入ってすぐ、ダンスを習い始めた。 気まぐれな長女に似合わず、長続きしたダンス。
ほら、安室とかが歌ってる後ろで踊る人たちみたいなダンス。
そこのダンススタジオは、年に一度発表会をする。 並の歌手がコンサート(最近はライブって言うんだってね)をする くらいの大きいホールだ。 そのために、生徒たちは一生懸命練習をする。
年に一度のダンス発表会と、来春から勤める会社の研修日が重なった。
ダブルブッキング。
長女が泣いた。
あの、気の強いヤツが。 あの、「なめられたらあかん」といつもイキッテルヤツが。
たぶんこれが最後の発表会。 心残りがないように、週に4回もレッスンを入れていたのだ。 レッスン料を支払うためにバイトしている状態だ。
ここのところの長女は、ダンスレッスンのために毎日暮らしているのだ。
泣いても、どうしようもないよな〜。
長女の友達に、 「そんなん、何の躊躇もなく会社をとるやろ」と説教された。
説教した友達は、長女を気の毒に思ったのか夕食をおごってくれた。
ダンス仲間の男性に、 「オレやったら、当日急病になるか、親戚を殺すな」と言われた。
発表会当日、インフルエンザとか祖母の急死とかで研修をばっくれるのだ。
長女は知っている。 自分の趣味より、これから勤める会社を優先すべきだと。
「きっと、会社に勤めてからも、嫌な事や悲しい事や辛い事、悔しい事が たくさん訪れると思う。これが最初の辛い事やな」
肩を落として、そうつぶやいた長女。
かわいそうだけど、しゃ〜ないな〜。 しばらくずっと長女の愚痴が続くだろうけど、辛抱強く聞いてやろう。
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