ことばとこたまてばこ
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2008年04月12日(土) 酔いどれ暗室

本日まっぴるまの裸体踊りの最中に夢想。わたくしがほろ酔いになるにはだいたいエビスビール500ml2本程度、うほ酔いになるには4本、べしゃ酔いになるには6本、ぐふ酔いになるには8本、ばら酔いになるには10本、どぶ酔いになるには14本、嘔吐寸前酔いになるには20本。流石に嘔吐寸前酔いでは産まれたての子鹿のように足腰がぶわんぶわんになってしまうので除外するとして、意識がぎりぎり朦朧でない、ばら酔い状態で暗室作業を行なったらいったいどうなるのだろうか、と考えた。ばら酔いにおいておれの酔いの特徴としては、顔を赤らめてあひゃあひゃ甲高く笑いっぱなしということと「じゃまくさいっ、しゃらくさいっ」とほたえて衣服をかなぐりすてて裸体になるというものがある。つまりまずは裸体でうひゃうひゃ気持ち良さげな声で叫びながら現像液、停止液、定着液を準備するだろう。しかしいかんせん酔いどれ小僧ゆえに正確な分量をぴしっ、ぴしっ、と計ることなど到底相成らんために目分量で、それも濁った目つきでなのでまるきり適当な量。「どぼどぼどぼ、ごぼごぼ、ぼぼぼぼぼ、おっやー、これ酢酸やーん、4リットルも入れてもーたもーた、どうりでくっさくて目がつんつんするおもたわあー」とかやらかしかねぬことは否めぬであろう。現像液の温度を計る際にもひとまず身体が覚えている流れでいちおう温度計で計ったりするが濁った目つきゆえ、温度計のほっそーいほっそーい数字なんて読めぬであろう。であって左手にはビール缶握っているために右手の人さし指を直接液にぶっこんで「ややっ、これはっ、つめたすぎるぞうっ!いやっ、あたたかいっ?ふわあ、ぬるいわ」って混乱した末に適当に済ませることであろう。兎に角いちおう曲がりなりにもプリントのできる液体が揃ったとする。次に引き延ばし機のセットであるがこれがまた至難であろう。レンズをはめ込む際にも、ばら酔いの特徴のひとつとして剛胆な漢(オトコ)気取りになりやすいわたくしはおそらく「へーっくっしゃーんっ、ぶしゃっ、ぶしゃっ、てっやんでえべらんめえ、ゆかいゆかい、くわつくわつ」って手鼻をかんだべとべとの手であろうことかレンズ部分に触りながらセットするであろう。そんな剛胆な男を気取っていても内心「これちょっとまずいんじゃないのかなあ、汚れ過ぎでしょうよ」と心配をするが「なあに、これが人間の人間によるあたたかさってやつだあ、人間の温度が感じられるってやつさあ、これがおふくろのあじってゆうアレみたいなにんげんのぬくもりだよう!鼻水越しのプリントなんて前代未聞だぜえ!写真の未知をきーりーひらけー、ひーひーひらっけ!」などと唄って不安を打ち消すであろう。というか今更めんどくさいものねえ!酔いどれに常識を求めるあなたがたのほうがよほど非常識である、なんて逆切れしちゃったりして!次にネガキャリアにネガをセットする行程があるのだが、酔いゆえの直感というじつに曖昧なものにすがってネガを選びとり「これこれ、これだよう、無意識が選びとった天草四郎が大事なんだよう」と意味の通らぬことをぼやきながらネガキャリアに挟み込もうとする。だがこれまたちっちゃいこまかい作業。ちゃーんと挟み込もうとしてもぶるぶるとおのれの意志に反して勝手にわななく手。最近とみにわななきやすくなっている。これって人として危ういのでしょうか。それはさておき結局最後には激怒して適当に挟み込む。だが案外そういうときに限って妙にうまくいったりするものである。人生の妙。これでプリントの準備は整った。時間短縮を優先してRCペーパーを使用する。バライタだなんて複雑怪奇極まるものを酔いどれにまかせらるかっ!とここでもまた逆切れしちゃったりして。うざいっ!さてここからが執念場である。なぜかというと上記の作業を終えるこのころには500mlエビスビール一缶を丁度良く呑み干す頃と思われるが「ちゃははっ、なくなっちゃったっ、えべっさん、えべっさんどっこにおわしまっかー」とかなんかゆうて、ピカピカッ、と部屋の電気をつけて冷蔵庫へ赴いてしまいかねないのだ。ピカピカッって電気がつく際にペーパーの束をまるだしにしていたら感光してしまい、すべてがおしまい。「わはははっ、えべっさん、えべっさんあなたはだあれ、わはははっドーン!はいっ、えべっさんですよー」って世迷い事述べながら気づかずに戻ってプリント作業を続けてもまるで無駄なわけでまことにもっておそろしい。まあ幸いにもペーパーをきちんと箱にしまってあったとしよう。新しいエビスビールをにこにことほがらかに呑みつつ、本来であれば試し焼きを行なうところであるが、このころとなると随分酔いが進み、ばら酔いからどぶ酔いに進んでいると思われるので「ぶわっぶわっ、めんどっくっちゃいっちゃっちゃっちゃちゃちゃちゃ、おさるのるんば」と省略して直接本プリントに入るであろう。引き延ばしレンズ絞り、タイマー露光セット、ここではさすがに写真作家を志す者としてピシッとした意識であろうとがんばる、がんばるはずだ、がんばると信じたい、がんばるよねおれ?素面のときの感覚に従うまま直感で絞りと露出時間を決める。だがっ、ニアミスがっ、どうしようもないッ!たとえば露出タイマーには10秒単位、1秒単位、0.1秒単位の3つのつまみがある。14秒とセットする際には10単位のつまみを1に合わせ、1秒単位のつまみを4に合わせるのだが、焼き込み覆い焼きなどの調整作業などで2秒必要なところを10秒単位のつまみを戻さずに1秒単位のつまみを2に合わせてしもて、結局12秒ものあいだ多量の光がペーパーに侵略。結果まっくろになる。めためたになる。失敗である。他に露出タイマーにはネガのピントをあわせるなど調整のために光がつきっぱなしになるボタンがある。これがタイマーボタンの下にあって非常に紛らわしいため間違って押してしまい「わははっ、黒えべっさんあんたほんまうまいわあー、でも赤えべっさんあんたも超絶かっこうまだぜえー!もう2本もあけてしもたわあーってまだ露光終わらないの、ほーんと酔っぱらうと時間の感覚おっかしなるわー次のビールいこいこ」となって結果まっくろになる。めためたになる。失敗である。またわななく手足のために設置したイーゼルをがんがんぶっつけてしまったりもするだろう。結果ぶれぶれぶれぶれである。めためたになる。でも運が良ければ失敗ともいえないのが写真のおもろいとこ。そんなニアミスが頻繁に起こることもまた想像に難くないであろう。そんなニアミスをも乗りこえてどうにかきちんと適量の光をあたえたペーパーを手にしたとしよう。ここでもまた惨事が。先ずRCペーパーの基本としては現像液90秒、停止液15秒、定着液180秒であるが、このころにはとろとろ眠気が押し寄せてきているであろうから90秒のところをふわふわふわふわふわふわ、うっとりとろとろとろとろとろ、と寝ぼけ気味に立ちつくして「あっれー、いま何秒だ」と時計をみても入れた時間なんてまーるで覚えちゃいないし「まっ、いーよいよいーよ、あじわいだよ。にんげんのてざわりだよ、これが癒しだよ。」ってぶっこいて長時間現像液に漬けてしまうだろう。結果猿の小便をぶっかけられたような黄色くて冴えないプリント。めためたになる。でも失敗とは言えないのが写真のおもろいとこ。まあそんなこんなで像のうつったプリントができあがったとする。どれもこれもが正規とずれまくりのそんな酔いどれ写真ばかりでまとめてみたらどうだろうと思った。写真新世紀とかひとつぼとかに応募してみたらどうだろう。「これはいかれてますふざけてますなめてますでもいままでにありません」なんつったりして。ややっ、これはおもちろそうだっ、とおれにこにこしてすわ学校の暗室を汚さん、と思い立ったので前準備として焼酎を呑んだ。がぶがぶ呑んだ。順調にぐふ酔い、ばら酔い、どぶ酔いとなる。いいぞいいぞ。わはははっ、なんだかタノシクナッチャッタ!と極寒の我が部屋で裸体踊り。そろそろ行こう、と思ったら足腰がまるきりぶわんぶわん。わあっ。た、立てぬ。嘔吐。眠気。ゲロの海のなかですやすやすやすやすや眠ってしまって。楽しいな。楽しいな。写真って楽しいな。


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