今日の散歩はアキコと一緒だったのでボクは好きなところへ歩いて行けた。 アキコがボクのいいなりに歩いてくれるので、ボクはご近所のメス犬のと ころへ行ってみようと思いつき、アキコをグイグイ引っ張って歩いた。
このメス犬はご近所で飼われている雑種の犬なのだ。 この家は広い庭のまわりをぐるりとブロック塀で囲まれているので、声は 聞こえても実際に会うことは滅多にできない箱入り娘である。 ボクの作戦は大成功しブロック塀のところまで辿り着くことができた。 ブロック塀のすぐ横にはムクゲの花が満開であった。
「もうすぐ会える!」とボクの胸の高鳴りが最高潮に達した時だった。 引っ張るボクをアキコがすごい力でぐいと止めたのだ。 アキコは「きれいなムクゲだね。これを見たかったの?」と言ったまま カメラを構え、ボクがどんなに引っ張ってもびくともしなかった。
ボクの作戦はここで終わってしまったのだ。 作戦失敗はすべてムクゲのせいである。 ムクゲの花はきれいだが、このブロック塀の中にいるむく毛のあの子の方 がずっときれいに違いないのに・・・。 ムクゲに作戦を阻まれた悲しいボクはムクゲを見た後、アキコにグイグイ 引っ張られて帰宅したのだった。
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