ボスやアキコが庭に出てくるとボクはとても嬉しい。 別に遊んでくれなくても「ゲンゾー」と声をかけてもらうだけでもボクは とても嬉しいのだ。
しかし二人が鶏の世話をするために出てきた場合にはボクは少し淋しい。 今日もアキコが出てきたと思って喜んだら、アキコは知らんぷりをして庭 にしゃがみ込み、鶏にやるための草を集め始めたのだ。 鶏の草集めが始まるとしばらくボクはかまってもらえないので、がっかり である。
ところが、今日アキコがしゃがみ込んでいたのは鶏の草を集めるためでは なかったのである。ボクのために冠を作ってくれていたのだ。 アキコはボクが喜ぶ顔を見るためにわざと知らんぷりをしていたのである。
ボクがもらった冠はクローバーの花や葉っぱやヒメジョオンがたくさんつ いた「季節の野草冠」であった。 緑の葉っぱの香りも花の香りもして、ひんやり冷たい素敵なかんむりを頭 に乗せるととても誇らしく、そして気持ちがよかった。 こんな素敵な冠は外国の王様だって持っていないに違いない。
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