今日、ボクは生まれて初めて海へ行った。 ボスとアキコがボクを海へ連れていってくれたのである。 ボクの庭から海まではクルマというのに乗って25分であった。
「海に着いたよ」とクルマから下ろされたが、ボクは海という のがどれのことかさっぱりわからなかった。 湿った砂が続く広い場所で、向こうに大きな水がゴウゴウと音 を立てているばかりであった。 格好良く写真を撮ってもらおうとオスワリをしてみたが、後ろ から大きな音が聞こえるのでボクはどうにも居心地が悪かった。
ボスとアキコはボクを海に連れていったら喜ぶか怖がるかを楽 しみにしていたらしいが、ボスとアキコはボクを見て「怖がる」 と結論したようである。
男らしいボクは決して怖がった訳ではないのだ。 ただ、とても居心地が悪くて早く庭に帰りたくなっただけなの である。 カモガワの海はとてもきれいだと聞いていたので、海が似合う 男ゲンゾーになってみようと思っていたのだが、ボクはもう海 に行きたいとは思わない。 ボクは山の男ゲンゾーとして生きることに決めたのである。
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