やっと念願の接見禁止が取れ、 今日は逮捕後初めて彼に会った。
電車を乗り継ぎ慣れた足つきで彼の居る留置場へ向かう。 そしていつも通り留置所の2つの玄関を抜け、 受付で2枚の受付の紙に自分の名前等を書く。
待ち合い室で五分程待っていると、 第一接見室と言う所へ案内された。
ガシャン!という鍵が開くような音。 奥で誰かの掛け声みたいな声が聞こえる。
「886、入りなさい。」
ドアが開く。 そこに彼は居た。
10日振りに見る彼・・・ 顔色も良く元気そうだった。。 ちょっと痩せたかな?
透明で丸く穴の開いた、 ドラマで見たのと同じ壁越し。 目の前に彼は居るのに、彼に触れたいのに、触れられない。。 壁越しに二人の手を合わせても 温もりは伝わってこなかった。。。 ただの冷たい壁だった。。
「ゴメンネ・・・」
彼が最初に話した言葉。 それを聞いたら沢山話したいことがあったのに、 言葉が中々出てこなかった。 一生懸命笑顔を作って「馬鹿…」って言ってあげたけど笑。
それからどうやって捕まったのかとか。仕事の事とか。 気になっていた事をゆっくりと聞いた。 彼は1つずつ私の他愛も無い質問にゆっくり答えながら、 涙がぽろぽろと頬を伝っていた。。
「出たらちゃんとする・・・ 仕事ももぅ店に戻るつもりは無い。 出たら挨拶をしてきちんと辞めるから。 ちゃんと就職もするよ。 それともう嘘はつかないって約束する・・・ 本当に今回はゴメン・・」
頭を下げる彼を見ていたら、 涙が出てきた。
泣かないって決めてたのに。 彼に心配かけない様に泣かないって決めてたのに。 化粧バッチリで泣いたら困る様にしていたのに。 全部台無し。
涙を拭っても拭っても止まらなくて、 「あの部屋で待ってるからね・・・」って言うのが精一杯だった。
でも、暗くなっちゃいけないと、 警察のTさんが呼び捨てにするんだよ〜(笑)って笑い話を言ったら 「呼び捨てはやめろっていってるんだけどな」って。 Tさんに嫉妬してた彼が可愛かったな(*^−^*)
ちょっと和んだ所で、 横に居た看守さんが「終わりです」と言った。 ここまでで約15分。短い様で長かった気がする・・・。
彼と看守さんが二人並んで立ち、私が席を離れるのを待つ。 彼が泣きながら立っている姿を見ていたらまた涙が出てきて、 「また来るから」って言わずに、 ただ彼に手を振って走り去ってしまった…
ゴメン…
留置場の外で沢山泣いた。 もしかしたら年内に出てこれるかもしれないのに。 たった3ヶ月位なのに。
彼の顔を見たらもっと会いたくなって。 彼に触れたくなって。 どんどん欲が出てくる自分が悔しかった。 近くに居たのに何も出来ない。 その現実が、分かってるのに出来ないのが苦しくて。 涙が溢れてくるばかりだった。
でもね、 彼の顔を見た事で 少し安心した部分があった。
いつまでも泣いてはいられないと、 彼も頑張っているんだから私も頑張らなきゃって。 ボロボロに化粧の落ちた顔を拭いて、立ち上がった。
空を見上げると 雲1つ無い空は澄んでいて、とても綺麗だった。 今日の空にはちょっと元気を貰った気がした。
頑張らなきゃね。
あんな彼だけど、 やっぱり好きだから。
大好きだから。
ずっと待ちます・・・。
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