ありさかニキ
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「ちょっと頑張ってみようかと思って!」
藤本あや。18歳。 自慢はミキティとあややを足して2で割るアイドルテイストなこの名前に、自分で言うのもなんだけど実際にミキティとあややを足して2で割ったような感じのあま可愛いベビーフェイス(と元彼に言われたこともあったのよ)。 春です。 恋の季節です。 大学に入学して、バスケットボールのサークルを見学した…その翌日。 あや、ここに恋愛宣言をします。
「でも恭弥センパイ、彼女いるみたいよ?」 「…え?」
――――――何…?
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「え、マジ、知らなかったんだ?恭やんエンレン中なんだよ。地元にイッコ下の彼女がいるん」 新入生歓迎コンパの飲み会の席で、恭弥先輩と仲の良い背の低い先輩の隣に座り込み、とりあえず聞けるだけ情報を聞くことにする。…ところでこの先輩は何て名前なんだっけ。どうでもいいか。とにかく恭弥先輩の情報をください。 「そっか、年下オッケーなのね」 「…すごいね、さっきの話聞いて真っ先にそこに食いつくんだ」 「だって恭弥先輩のイッコ下ってことは、私と同い年ってことでしょう?」 「そうだけど…いやいや。え、君…えっとなんだっけ、ミキティ?」 「あややです」 「そうだあやちゃん。え、恭やんの事マジに狙う気?」 「いけないですか?」 「いやーそういうのって俗に言う略奪愛とかいう類のものじゃないのかなーとかー」 「いけないですか?」 「いやーうーんそんなにハッキリ言われると返事に困るとこだけど…」 「わたし、思うんですけど」 駄目だ、この先輩じゃ話にならない。 ファジーネーブルの入ったカクテルグラスを片手に、わたしは席を立つ準備をしながら、先輩に向かって言った。 「地元の人と付き合ってるっていうのは、ようするにただ向こうの人と知り合うのが少し早かったってだけだと思うんですよね。誰がどれだけその人のことをスキかっていうのは、そんな時期的な問題じゃないと思います」 「へー。なんだかすごいへ理屈だね」 「正当な恋愛論です」 本当はビールをジョッキで何十杯も飲める子だけど。隅のテーブルで女の先輩たちにつかまっている恭弥先輩に、わたしの様子が見えているはずないとは、思うけれど。 …ああ、いいなあ。先輩たちはああやって、同い年だからってだけの理由で、肌もきれいじゃないのに、少しも可愛くなんてないのに、当然のような顔して先輩と笑い合う権利を持ってるんだ。 ――ううん。だいじょうぶ。これからわたしも、そんな権利を先輩たち以上に掴み取るために、今その下準備をしているんだ。大丈夫大丈夫。わたしなんか先輩と同じ大学で、先輩と同じ学部で、先輩と同じサークルで、しかも同じ条件下にいる人よりもずっと可愛いんだから。地元の彼女なんかに負けない。 負けるはずない。 …よし。頑張れ、わたし。
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「恭弥くんて実際ほとんどサークルの練習に顔出さないんだよ。去年なんかほんと、月に一度来ればいい方っていうか、そんな感じだったもん。合宿にだって来なかったし」 「なんでですか?」 「バイト。かなり忙しいみたい。お金ほしいんだって」 今度の話し相手はまたもひとつ上、恭弥先輩とタメの岩佐先輩。この人はなんだかイトコさんが恭弥先輩の友達の人と付き合ってるとかで、冬休みには一緒にスキー旅行にも行ったとかいう、かなりの敵だ。 ただ彼女本人には恭弥先輩に対する恋愛感情はまったくナイみたいで、狙っているんですという話を遠まわしにしてみたら結構ノリ気で話にのってきてくれた。…うん。わりといい人なのかもしれない。サークルの中では可愛い方だし。 それにしても恭弥先輩が金の亡者だったとは意外だわ。お金とかそんなに興味なさそうなのに。服だってそんなに高いものを着ているわけではなさそうだけど(ダサイという意味ではなくね!) 「…でもそのお金、彼女と同棲するための資金らしいんだけど」 ぱき。 右手の中で思い切りよくポッキーが弾けて砕けた。 「わっ。あやちゃん!」 「…もっかい聞いてもいいですか?」 「いや怖いからいいよ、聞かなかったことにしといてよ」 「…え、ていうか、同棲?…なんでそんな話になってるんですか?」 「うーん、詳しい話はわたしもそんなに知らないんだけどね。でも彼女さんも恭弥くんと同じココの大学入りたいみたいで、ずっと頑張ってるんだって。今年は落ちちゃったみたいだけど、来年受かったら一緒に住むみたい」 「……」 「だから恭弥くん、難しいかもよ。まあカッコいいし優しいしバスケうまいし、理想だけどね。まあ普通に考えて、そういう人にはすでに彼女がいてもおかしくないかなっていうか」 「……同棲……」 「うん。あ、でも、したいなーって言ってるだけで、本当にするかはわかんないってよ。向こうの親の反対がスゴイんだって。彼女さんが今年落ちたのもなんかいろいろ複雑な事情があるとかないとか」 「…そっか。なんだ…確定じゃない上によく考えたらあと一年あるんだよね」 「…え?」 「なんだそっかよかった、まだ見込みはあるってことか」 「……あやちゃん?」 「はい?」 「いや…あれ、あきらめたわけでは、ない…みたい?」 「なんでですか?あきらめませんよ?だって遠距離恋愛なんてすごい脆いじゃないですか。しかも親の反対が厳しくて、しかも彼女は浪人生。どこにひけめを感じるんですかっ」 「……そういう問題じゃないと思うけど……」 「あれ、何か言いましたか?」 「う、ううん、なにも?」 「いろいろ教えてくれてありがとうございました!ちょっと先輩のトコ行ってきます」 「……がんばれ…」
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なんかラブコメ!みたいな雰囲気の話が書きたかったんですが、残念ながら時間が来てしまいました。 果たして続きを書くのか書かないのかそれすら微妙ですが、新キャラ、藤本あやちゃん、狙っていると見せかけて実は真性天然ぶりっこ。 …書いてて楽しいのでキライではないのですが(笑)
それにしても思わぬところでWaitingのその後が明らかに。 和夏ちゃん浪人しちゃったのね。
まあ、びみょうな感じです(笑)
ちなみに名前を覚えてもらっていなかった彼は結局ダレのことだかわかっていただけましたでしょうか、正解はCMの後!
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