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2004年12月05日(日) 憧憬は記憶の中に

 甥の亮太郎(現在小学六年生)が突発性難聴で入院し、その付き添いで一晩病院に泊まって来ました。今朝、病院から戻り、昨日締めきりだった原稿を一本仕上げてメールでデザインさんに送り、そしてこれを書いています。
 病院に泊まるのは、母が亡くなった日の前日以来なので、もう18年ぶりくらい。甥もモノ作りが好きなので、臨時出費にしては高過ぎたけれど、学研の「大人の科学」シリーズの中から「鉱石ラジオ」を買ってやりました。昨夜は最後の仕上げとして残っていたアンテナを一緒に作り、聞こえの実験をして、消灯前にNHKのローマ帝国の話を半分だけ見て眠り、自分も甥も朝早く目が醒めたので、母の闘病生活の話などして過ごしました。
 お年寄りが「昔のことは良く覚えているんだけど」というけれど、本当に、絵が上手に描けたら、そのまま紙芝居にできるんじゃないかと思えるくらい、時間を遡るほどにその情景が鮮明に甦ってきて、その当時のことや、そのことにまつわる自分の意識の変化など、余分なことまで話したような気がします。そうしているうちに、自分もまた、亡くなった祖母や母の、記憶の中にある情景の話を随分聞かされた事など思い出し、結局こうして代が変わるだけで、誰の人生も、同じような道筋をたどって時間は過ぎて行くのだなと感じました。
 時間や記憶というのは、自分がずっと心に思い続けているテーマのひとつで、なにかにつけては発想をそこへ着地させて納得しているのですが、しばらくぶりの病院宿泊もまたそこへ行き着いて、なにかしら記録しておきたいと思い、今日のこの日記になりました。
 いつか。それがいつのことになるのか、そういう日は来ないのかわかりませんが、夕べ仕上げた鉱石ラジオの実験で、ジ〜という音を拾って『聞こえるじゃん!』と言った瞬間も、紙芝居の一枚として甦えった時はいつも、甥は小6の、パジャマを来た少年なんです。


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