ショートショート


その日両親は旅行に行っていて私は家に1人だったので、仕事が休みだった彼女に泊まりに来るようにと誘いをかけた。

彼女が泊まりに来た夜の事は、正直何も覚えていない。
おそらくは遅くまで語り合ったのだろうけれども、
どうしてだか記憶の端にすら残っていなくて。
ただ。
翌日の朝の事は今でもはっきりと覚えている。



私が作った簡単なチーズ入りのオムレツを一口食べると、彼女は「美味しい」と微笑んだ。
その笑顔に安堵しながら食事を終えると彼女が不意に云った。

「私、毎日この朝御飯が食べたいなあ」

いきなりの言葉に、私はしばらく返事が出来なかった。
その短い言葉を、彼女が何を意図して云ったのかがはっきりわかってしまったから。
「一緒に暮らしたら私が料理担当って今から決まってるの?」
「料理苦手なの知ってるでしょう?」
長いふんわりした髪と、やわらかい笑顔の彼女はなんでもそつなくこなす才女のくせに、料理だけは下手だった。

「洗濯も掃除も私がするから、料理だけはやって?毎日一緒にこうやって朝御飯を食べれたら、それだけで私は幸せだよ」

プロポーズのような言葉に思わず赤面してしまい
「私もだよ」
と返すのが精一杯の私に、彼女は年下のクセに余裕の笑顔を浮かべて
「春になったら、一緒に暮らそうね」
と、云ってくれた。



あれから何年たっても、あの日の朝を忘れる事が出来ない。

私の隣でいつでも哀しみから救ってくれた彼女が。
数年後、私を絶望に突き落とす事なんて思いもしなかった。

いっそ死んでいてくれたら楽だったのに。
そうしたら、春が来る度にこんな気持ちになったりはしなかったのにと。

桜を見る度に今でもそう、思う。









みかちゃんの日記『コチラ』に対抗してみましたよ!
やはり文章書きの人のようには上手く描けませんね〜(苦笑)

さて。
サンクリの原稿にとりかかります!(姉さんピンチです!)

2006年04月08日(土)
萌えたり食べたりな日記帳 / ぱわふるここあ