彼がアルバイトとして入ってきた時、彼は高校1年生だった。 私とは4つ違いだったわけだけど、けっこう仲良く話したりしていて。 彼が高校を中退してしまった時も、なんだか手のかかる弟を見ている気分だった。
彼は音楽を目指すという、ありがちな人生を選んで 東京に行くという、これまたありがちな選択をした。
そんな彼に、「CDが出たら買うからね〜」と背中を押してあげたりして その頃には姉というより母の気分だったんだと思う。
茶髪でノリがよくてほどほどにかっこよくて可愛い彼女がいて。 なのに変な所が真面目で、イイコで。 本当、どこにでもいるような子で。
そのまま彼とは直接連絡を取る事もなくなってしまったけれど 偶然彼のお姉さんやお母さんにお会いすると「元気にしてますか?」と聞いていた。 その度に「インディーズでCDを出した」とか「彼女と同棲を始めた」とか。 これまたありがちな報告を聞いて、ちょっと微笑ましく思ってた。
時折、彼と似たような若い子を見ると「元気かなー」と思い出す。 そしてまた、近所ゆえにばったりと彼の家族に会うと「元気にしてますか〜?」と聞いて 「そうですね」という答えが返ってきていた。
なのに昨日。 「……この2月で3回忌を向かえました」って突然云われても、どうしていいのかが分からない。 家族の方が気持ちの整理がつかなくて、 他人に彼の死を伝えられなかったのもわからなくもないけど それでも、 去年「元気ですか」と聞いた時 一昨年「元気ですか」と聞いた時 彼はもうこの世に居なかったのかと思うと、どうしてもやりきれない。
ありがちな人生を歩んでいた彼は 20代後半で音楽を諦めたり、だらだら付き合ってきた彼女と結婚したり いつのまにか子供が出来たり、結局はただのサラリーマンになったり。 そういう人生が似合っていたはずなのに。
20代の若さで 闘病するまも無くあっという間に病に侵されて 「両親を頼む」なんて遺言を頼むような、そんな人生は似合わないのに。
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