Felixの日記

2005年11月10日(木) 本とか

 『蒼天航路』が終わっちまったよおおおお。夫人の奏でる音楽を聴きつつ惇兄と語り合う中ふっと息絶える、死に臨んでの布告、青州兵の帰還、喉を破り吐血するほど慟哭するキョチョ、狂乱する劉備の姿・・・最後は曹操の魂が馬に乗って空を駆け、はるか西方の民族大移動の兆しを見ると、やがて少年の姿に戻り、初恋の女性・水晶を探す旅に出かけるところで幕引き。
 若き曹操の名言「ならばよし」もここで再出、狙いすぎだけど、きれいに終わらせた。死ぬ前に見た「あおいきば」に斬られる夢は、近い将来中原が北方異民族に支配されることを予見した、ということかな?
 横山光輝御大の『三国志』は吉川英治ベースの作品だったけど、こちらは確たる原作があったわけではないので(イ・ハギン氏の原作も、クロニクル読む限りでは本当にインスピレーションを生み出すためのもの程度にしか使っていなかったし)、ストーリーを随時組み立てながら週刊連載(豪快な休載あったけど)にてひとつの大きな作品として完結させた、というのは偉業。しかも曹操主人公というスタイルで。これ以降に始まった劉備主人公の三国志マンガはそれだけで「何を今さら」と陳腐に感じられるようになった。横山、ゴンタ、これらを越えるには、もう孫呉三代を『魁!男塾』みたいなノリで描くしかないんじゃないか。

 ちくま学芸文庫から『完本・八犬伝の世界』(高田衛著)が出ていたので、買った。中公新書の時分からめっちゃ分厚くなっている。書き下ろしが三章分加わっているので、こりゃ買うしかない。大学の卒論は八犬伝だったけど、今読み返してみると、よくもこんなもん提出できたもんだと顔から火が出そうになる。
 そういえば今度新春ドラマ化されるんだっけ。小文吾が照英なのがいかにもで笑った。杉倉&堀内の重臣コンビ激シブ。主君の「龍講義」を聞かされたりするんだろうか。悪役が結構豪華キャスト。悪役は「名詮自性」でへんちくりんな名前の奴が多いので面白い。鋸鮫五鬼五郎(のこぎりざめごきごろう)とかも出てくる?
 しかし足利成氏、京本政樹?管領・細川政元のほうが似合いそうだけど。彼はこのドラマには出てこないのか。

 藤原カムイの『西遊記・円の巻』(NHK出版)を見つけたので、これも買う。前巻(悟の巻。悟空が三蔵法師の弟子となるまで)初版が2000年なので、5年ぶりの新刊。玉龍の変じた白馬、そして悟能(八戒)、悟浄を収めるまでを描く。最後に「完」とあるので、ここまでということか。原作(諸本あるけど)の西遊記を忠実に全編マンガ化したのは・・・ないか。道中似たような話が続くし、無敵の悟空も例の輪っかはめられてからは明らかに弱くなってしまい、しょっちゅう天界や観音さま、お釈迦さまに助けを求めてるし。

 あと、平凡社新書の『正倉院薬物の世界』(鳥越泰義著)。正倉院に「冶葛」として所蔵される世界最強植物毒ゲルセミウム・エレガンスについてもちょっと詳しいことが書かれている。収蔵後わずか百年でそのほとんどがなくなってしまった猛毒は一体何に使われたのか?著者は、奈良時代の政争で服毒自殺した、また不審な病死をした人物に使われたのではないか、かの長屋王もひょっとして・・・と推測している。
 毒の話はどこぞのチョコラータ先生目指してる女子高生のせいで今はちょっとマズいのでそれはこれまでとして、ほかにもいろいろな植物や鉱物からなる薬が羅列されており、それを見ているだけでも面白い。


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Felix