お産もなく、穏やかな午後。 分娩実習なのでその他(産褥さんのお世話など)はしないのです。 お産が無ければゆったりと流れる時間。
けれど周り(実習病院の助産師や医師)はばたばたと走り回ってる。 忙しそうだな。と思いつつ机で記録をしている私。
ふと流しにある青いシートが目に留まった。 何かを包んでいるようなそんな感じのビニールシート。 私が現在いるところは処置室。
こんなところになんだろうか?
さっき生んだ人の胎盤かな。
とはじめは特に気にも留めなかった。 けれど胎盤だったらすぐに冷凍するはず。 やっぱり気になったのでちらりと覗いた。
ビニールシートで包んであったのは
ぶよぶよになった赤ちゃんの死体。。
え?
一瞬固まった私。 なぜこんなところに。 思わずじっと見てしまった。
皮膚は剥がれ、羊水を吸収してぶくぶくになっている。
私はなんとも言えない感情を抱きさっとビニールシートを元に戻した。 ふと記憶が蘇った。大人しく机で記録していた時ちらりと聞こえていた。
そういえば誰かが今日は緊急帝王切開があったって言ってた。 NICU(新生児集中治療室)に行かなくてはとか言ってたような。
スタッフが忙しそうにしているのも それらの話もあのビニールシートで全部つながった気がした。
ひと段落したところで医師がその子のお父さんらしき人とやってきた。 なぜこの子が亡くなったのかをビニールシートを広げながら説明している様子。声にもならない声で答えるお父さん。
「はい。。。。」
と。頷く。 きっと「はい」を言うのが精一杯だったのだろう。 その表情は泣くまいと我慢している様に思えた。
32週での緊急帝王切開。 もう一人の子も危なかった。 もう一人の子は助かったけれど、その子ももちろんNICU行き。
双子はリスクが高い。 と改めて感じた。
きっと生きたかったろうに。
32週まで頑張ったのにね。
今度生まれ変わる時は生きてうまれるといいね。
今だビニールシートに包まれていた子の表情が忘れられない。
2004年10月31日(日)
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