2015年05月23日(土) |
駆け込み女と駆け出し男 |
ほんとにステキな映画。面白かったですー。
離縁を求めて東慶寺に駆け込む女たちと、
彼女たちの再生を真摯に手助けする人たち。
最初に白状しておきますと、
わたくしこのタイトルをまったく理解しておりませんでした。
「駆け込み女」はいいとして、「駆け出し男」って何よ? どこへ駆け出すのよ?
などと思っていた、ぼーっとしているにもほどがあるわたくしをお許しください。
いわゆる「駆け出し」のことですよ。
説明せずとも99%の人はおわかりでしょうが。
新米の未熟者、ってことですよ。
もちろん、大泉洋ちゃん演じる信次郎が、
医者の駆け出しであり、戯作者(作家)の駆け出しであり、
女たちの離縁の調停をひきうける御用宿のひとりとしても、
駆け出しであるということなのです。
新米だからいつもいっぱいいっぱいだし、
女を取り戻そうとする夫たちからは幾度となく危険な目にあわされるし、
東慶寺からも、医者として呼ばれていくのにいつもかなり失礼な扱いを受け、
なにかと損な役回り。
それでも、医術や戯作の知識を総動員して女たちを守り、東慶寺を守り、
自分も成長していく、実に魅力的な「駆け出し男」なのです。
じょご(戸田恵梨香)をはじめとして、
駆けこまざるを得ない女たちの身の上があまりにも悲惨で、
こっちが代わりにろくでもないオトコたちを斬り捨てたくなるほど。
でも、じょごがとにかく健気。
そしてわたしの大好きな戸田恵梨香嬢。(それはともかく)
あんな理不尽な目にあわされても、恨みつらみにとらわれることなく、
日々をひたすら健気に生きていく。それは東慶寺に入っても同じこと。
人に対しても健気で誠実だけど、自分の人生に対してまず健気。
その健気さがしなやかな強さを生み出し、生きる技術も知恵も学んでいき、
どんどんステキになっていく。
わたしには、SPECの当麻以来の、大好きなキャラです。鉄練りのじょご。
そして、満島ひかりさん演じる、お吟のカッコよさといったら!
満島ひかりさんがここまで素晴らしい江戸の粋な女を演じられるとは。
満島さん面白いわー、と思ったのが、つい最近の「ごめんね青春!」でしたが、
それをかるーく蹴飛ばすイキオイのハマリ役です。
お吟を妾にしていた豪商・堀切屋の旦那を演じる堤真一氏がまた、
ちょっといわくつきの人で、こちらもカッコいい。さすがお吟が惚れた男。
姿を見せぬままのお吟との別れも、このふたりならではの粋の真骨頂でした。
粒ぞろいの役者さんたちの素晴らしいお芝居だけでなく、
山のなかの古びた重厚な寺、寺の中での女たちの生活、四季の自然の風景、
穏やかな音楽、どれもとても心癒してくれます。
そして意外に、最後の最後までハラハラドキドキさせられる。
ここまできて、せっかくここまできて、死なないでね! 殺されないでね! と。
信次郎の滑舌の良さ、立て板に水の弁舌の素晴らしさは、
車寅次郎や古美門研介と肩を並べられるほどでしたわ。
寅さんよりはるかに空気を読み、古美門先生より100倍善人だし。
洋ちゃんにとってはBarにいる探偵さんよりもハマリ役なのではないかしらん。
洋ちゃん好きで戸田ちゃん好きなわたしとしては、
信次郎がじょごに唇を奪われるシーンが、観ていてとても幸せでした。
まさか洋ちゃんと戸田ちゃんのラブシーンを観る日が来ようとは。
しかも急襲してるのはじょごの方だし。信次郎押し倒されだし。
めっちゃコミカルで可愛らしくて、ほんとにもうふたりとも幸せになれよ!と。
信次郎がじょごに惚れるのはあたりまえですが、
じょごが信次郎に惚れちゃうのもわかる。
あれは惚れる。馬面だろうとひょっとこ顔だろうと(誰に言われてたか忘れた)
惚れてしまう。
忙しく立ち働くじょごとすれ違いざま、
そーっとじょごの前髪を上げ、無言で傷の具合を確かめ、
そのまま無言で立ち去っていく信次郎、のシーンで
コロっと惚れたわたくしですから。
まだ映画の前半あたりでしたがすでに、
信次郎ってステキやーん♪ ってなってたわたくしですから。
登場人物の多くが「南総里見八犬伝」の完結編を心待ちにしていたり、
町の銭湯ではその作者の馬琴もお湯につかっていたり、
江戸の文化や風俗に関するエピソードも多く登場し、
それが後のとても重要なシーンにつながっていきます。
そのため、江戸文化の用語や人名など、
初聞きでよくわからなかったものもいくつもあったので、
パンフで勉強しなおしてから、また観に行こうと思います。
次は聞き逃さないぞー。
本当にステキな作品です。
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