| 2005年09月24日(土) |
劇団☆新感線『吉原御免状』 |
21日に観てまいりました。
今回の作品は、これまでの大爆笑チャンバラ活劇とは趣が違います。
簡単に言うと、笑わせる場面がほとんどない。
かろうじて、藤村俊二氏演じるご隠居のとぼけた様子とか、
堤真一氏演じる誠一郎の朴訥さが、うっすら微笑ませてくれる程度。
これは、「吉原御免状」というお話が新感線のオリジナルではなく、
隆慶一郎氏の原作にかなり忠実に作った舞台だからのようです。
でも、だから不満ということではないですよ。
吉原という場所をめぐって、人気の太夫や時の権力者たちを巻き込んだ、
スケールの大きい、豪華絢爛なお話です。
松雪泰子嬢と京野ことみ嬢演じる太夫は本当にあでやかで、
堤真一氏演じる誠一郎は、さすが宮本武蔵に育てられた剣豪というだけあって、
めちゃくちゃカッコイイ。
でも、山育ちで素朴で女に疎くて、そのギャップがまた面白い。
吉原は単なる花街ではなく、
政治的に縛られない自由の民が暮らす一種の治外法権的場所で、
その誕生には将軍の生い立ちの秘密までもが絡んでいる、との設定で、
吉原の消滅を図る裏柳生一族と、守りきろうとする吉原者たちとの攻防、という、
本当に面白いお話です。
ただねぇ、
濡れ場が結構多かったり、女を虐める拷問シーンがちょっとキツかったりするので、
映像だったら15−Rや18−Rに分類されるかもしれない。
なので、お子さま向きではないかもな。
相変わらず、男よりもオトコマエな心意気を持つ、美しく強い女たちは素敵で、
強くて単純で優しい男たちは愛しくて仕方がない。
女やってるのも男やってるのも切ないよなー、としみじみしてしまいます。
でも、その切なさ味わってこそ、
男やってる甲斐も女やってる甲斐もあるってものだわ、と
新感線を観たあとはいつも感じることを改めて噛みしめるのでした。
この誠一郎という男、剣豪とは言え最初はとても純粋で頼りなげだったのだけど、
大切な女や仲間が惨殺され、「吉原を守るために修羅になる」と決意して、
そのあたりからようやく自分の歩むべき道が見えてくるのね。
松雪泰子氏がパンフレットで「誠一郎のように、純粋がゆえの無知だったり、
純粋がゆえの優しさだけでは人を傷つけてしまう」と言っていたのが
深く同感するところでしたわ。
「誠一郎を女性から見ると?」の質問に、比丘尼役で登場した高田聖子氏が
「魅力的だとは思うけど、まっすぐすぎて、面倒くさそう。
(中略)ああいう人と付き合うには根性がいりますね。」
と、言っていたのにも激しく同意。
「純粋」とか「まっすぐ」って、すごくよい言葉だし否定する気はないけれど、
それにばかりにこだわることが美徳とは全く思えないからね。
この面倒な世の中で、自分を守り、大切なものを守りながら生きていくには、
汚れたり曲がったりして、怖い修羅にならなきゃいけないときだってあるさ・・・
と、もしつきあったらそりゃ相当に根性がいるに違いない
らぶふぁいたーな堂本さんに、
あまり純粋でない心をこのところグサグサ突き刺されているワタクシは
思うのでありました。
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