林心平の自宅出産日記

2005年03月09日(水) りかにかんむりをたださず 38週!

 おととい助産婦さんが来る予定だったのですが、朝、電話がかかってきて「天気が荒れ模様なので延期したい」と言われました。そこで、木曜日に来てもらうことになりました。

 妻がはりきっていたアンケートの入力バイトは、途中でやめることになりました。職場において、直属の課長はむしろ、「やってもらったら?」と言っていたのですが、どうも、横槍が入ったようでした。その主旨はこんな感じです。
「林君は最近、奥さんの体調が悪いと言って、仕事をたくさん休んでいた。それなのに、今、奥さんが入力の仕事をしているらしい。そんなのはおかしい。実際には、林君自身が残業時間中に入力して、給料を二重取りしているのではないか」
 これは、まったくのでたらめです。まず、ぼくが仕事を休んだのは、ほとんどが子どもたちの病気のためです。妻は雪道の上を、子どもの手を引いて病院に連れて行くことはできません。そのため、ぼくが連れていかなければならなかったのです。
 それから、給料の二重取りなど、せこいことはしません。もし、それをするならば、もっと巧妙にできます。何も、妻の名をかたったりはせずに、知りあいの大学院生に発注したことにしたほうが発覚しにくいでしょう。(妻いわく、「それだって、ちっとも巧妙じゃありません」)
 しかし、そもそも、そこまでしてお金がほしいのならば、昨夏にひともんちゃくあった選挙問題をうまくこなしていたでしょう。ぼくは、参議院議員の候補者の集会に出たり、ビラをまいたりすることを上司から指示されたのですが、「嫌です」と断っていました。
 そのことについて、つい先日も、別の部の部長から「選挙に協力しないのはいいけれど、上には行けないことを覚悟した方がいい」と言われました。出世コースを外れていると、サラリーマンになって、 たった1年半で宣告されるなんて、お金のほしい人がすることではありません。
 それに、現在は、無給である育児休暇をわざわざ取ろうとしています。申請書さえ作られていないような環境のもとでです。きっと、このことでも部長からの呼び出しがあるでしょう。

 でも、「李下に冠を正さず」です。
 うちには、『日本語であそぼ』という教育テレビの番組の、週めくりカレンダーがあります。毎週「名文」が紹介されています。先週は、「りかにかんむりをたださず 故事成語」とありました。ぼくは、この意味がわからず妻にたずねていたのです。
「『疑わしいことをしてはいけないよ』という意味だよ」と妻は教えてくれました。1週間にわたって、毎日、「りかにかんむりをたださず 故事成語」を読んでいたのに、ぼくは、すっかり、疑われるようなことをしていました。
 故事成語もあなどれないものです。
 そう思って、今週の「名文」をめくってみると、
「ぬきあし さしあし しのびあし 慣用句」でした。
 何かがぼくたちに、迫っているのでしょうか。注意しなければ。

 同時に保育園の卒園式における写真問題も持ちあがっていました。これは、卒園式の日に卒園児たちの写真をビデオにして上映する、という父母発案の企画のことです。そのために、保育園で撮った写真を使うのですが、「途中入園の人は、それ以前の写真を0歳から毎年5枚ずつ持ってきてください」と言われたのです。
 今、ぼくたちの手元には入園以前の写真がありません。ですから、このままでは、ぷーちゃんだけ入園前の写真がないままに編集されてしまい、当日、ぷーちゃんにさみしい思いをさせてしまうと心配でした。
 そのことをビデオ製作を担当している、ぷーちゃんの同級生の母親に伝えました。すると、「途中入園の子どもたちの写真が少ないので、入園以前の写真を持ってきてくれるように頼んだのです。ぷーちゃんについては、事情はわかりました。ぷーちゃんが悲しくならないように、配慮してうまく作るからまかせてほしい」との返事でした。
 ぼくは、「みんな、入園してからの写真を使うということにしてもらえないか」と言ったのですが、
「そうすると、今まで徹夜でしてきた作業が無駄になって腹が立つ」と言われました。
これが「配慮」する人の言い草なのでしょうか。
 とうとう「もう、卒園式には出ないことにします」とまでぼくは言い、このやりとりをあきらめかけていたときに、妻が問題を整理してくれました。

ビデオ編集の仕方に2通りあります。
1.保育園の写真だけで編集する。
→途中入園した子の写真が少ない
対応策:入園前の写真も使う

2.入園前の写真も含め編集する。
→ぷーちゃんの入園前の写真がない
対応策:なんとかごまかす

編集している人はぷーちゃんをごまかす方法で編集を進めています。
1の場合、入園前の写真も使うという明確な方法を提示しています。
しかし2については、任せて下さいの一点張りです。明確な対応策を示されていないので、こちらが心配するのは当然だと思います。

 なるほど、明快です。ぼくはほとほと感心して、このまま、先方にメールを送りました。すると、「そんなことを言われておどろきました。 ごまかしてなんかいません」という返事が来ました。それでも、結局は、「1.保育園の写真だけで編集する」という方法を選択してくれました。そして、
途中入園した子、中にはぷーちゃんよりもずいぶんあとになって入ってきた人もいるのですが、については、入園してからの写真をたくさん使うという方向性を示してくれました。
「そうしますから、お願いですから、卒園式には来てください」とまで言われてしまいました。
「でも、生まれちゃったら行けないかもしれません」と言うと、さらに
「もし、保育園の送り迎えができないのでしたら、私が迎えに行きますから」とまで言われてしまいました。

 以上のことが、同じ日に起こった出来事でした。
最近、忙しくて余裕がなくて、いろいろなところで衝突しているのかもしれません。
帰宅すると、妻が豚肉のピカタ、ブロッコリーとトマトソース添え、ポタージュ・ボン・ファムを作ってくれており、それはおそらく、今晩、世界一おいしい晩ごはんであると思われ、ずいぶん元気になりました。


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