ぼくの職場では年に一度、上司が職員の評価をするために個人面接をおこないます。その場では、職員の希望を言うことができます。 そこで、育児休暇を取得したいと考えていることを伝えました。まず、3月に妻が出産予定であり、自宅出産をするので、生まれたら残っている10日程度の有給休暇をまとめて使いたい。その際に、もちろん、妻が出産したときにとれる3日間の特別休暇もとる。そのために、3月におこなう予定である調査を早めにやっておきたいと、言いました。 それらは、可能だということでした。 次に、4月1日から4月30日まで育児休暇を取得したい。理由としては、まず、自宅出産であること。転勤が予想され、そうなると子どもの保育園が変わる。その際にはならし保育が必要であるが、それはぼくがしなければならないこと。家族全員の生活環境が変わるので、そのケアをしたいこと、を伝えました。 それに対する上司の返事は 「難しいだろうな」でした。 「どうしてですか。育児休暇制度はちゃんと明記してありますよね」 「それはそうなんだけど、1人が1か月いないと、その分、まわりの人がカバーすることになるだろう。その人が回せないんだ」 「でも、それは、育児休暇をとらないという前提で、人と仕事を配置しているということになりますよね。今までとった人はいないんですか」 「そうなんだ。いないんだよ。まあ、出してみて、もしだめだということになったら、労働組合でとりあげたほうがいいよ。1人でやると、実現できないかもしれない」 どうも、納得がいきませんでした。制度がないのなら、職場全体の問題として、制度の確立を求めていく、ということになるでしょう。でも、すでに制度はあるのです。それなのに、取れないなんて、おかしな話です。
話は変わって、ぼくの評価という話になりました。 「仕事はよくやっているし、まちがったらすぐ謝るし、とてもいい評価だ。でも、ひとつだけ、低い項目がある。協調性だ。家族を大切にするというのは、正しいと思う。そして、おれはそれを理解しているけれど、それを理解していない上司もいるから、心配だ」 どうも、仕事よりも家族を優先して、飲み会にあまり出ないとか、そういうことを言っているようでした。でも、上司の言った評価は、まさにぼくの目指していたスタイルだったので、内心、嬉しく思いました。 仕事は頑張る。家庭の事情を仕事に持ちこむ。 結局、育児休暇をとるということは、家庭の事情を仕事に持ちこむことになり、「協調性に欠ける」と評価されるということのようでした。
家に帰って、妻に言いました。 「今日、上司との面接があって、とてもいい評価だったんだけど、ひとつだけ低い項目があったんだ。それはね、」 「協調性」 と二人の声はぴったりあいました。 「どうしてわかったの」 「そりゃあ、わかるよ」 2人して、笑ってしまいました。
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