そよ風


2005年06月13日(月) 義理堅い人

和歌山県は岩出町の山の中に、そのお店「桜の里」はある。
採れたばかりの新鮮野菜やお花が売られている小さな店だ。
日曜日にたまたま車で通りかかって立ち寄った。

60代と思しきリュックを背負った女性が、
野菜で満杯になった手提げ袋を持って、バスを待っておられた。
駐車場の警備員さんとの会話の内容が耳に入ってしまった。
JRの駅までバスに乗り、そこからまた電車に乗られるそうだ。

ついつい親切心満載の主人が声をかけた。
「もし良ければ車に乗って下さい。ちょうどJRの駅を通りますよ」
「ほんとですか! ありがとうございます。」
大喜びのその人と車内での会話も弾む。
はるばる大阪は堺市から野菜の買出しに来られたそうだ。

我が家はJRの駅のすぐ近くにある。
その人を駅までお送りするのに、何の苦労もない。

駅に着いた。
しかし、その人は車から降りようとされない。

「住所と名前を書いて下さい。」
「えっ? そんな大げさな・・・こちらは、ただのついでだったんです」
「いいえ、このままでは、私は絶対に下りることができません。」

なんとしても私達の住所と名前を教えてほしいと粘られる。
書いてくれるまで、私は絶対に車を降りない、
こんなにお世話になって、そのままで引き下がる訳にはいかない、
そう言って、デンと後ろに座ったまま、断じて動く気配なし。

「いいですよ。ほんとうについでだったんですから」
「いいえ、教えてくれるまで私は下りません」

何度、同じ会話が狭い車内で繰り返されたことか。

こんなことで、すったもんだするとは予想外のこと。
ほんとうに15分間以上、意地の張り合いが続いた。
こんなことなら、乗って頂かないほうがよかったのかな?

さて、どっちが勝ったでしょう?
私達です。
やっと諦めて下さって、車を降りて下さいました。
どっちみち、筆記用具を所持されてなかったのですから、
結果はこうなるのはわかっていましたが・・・

おかげで、太極剣の練習に遅刻してしまいました。


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